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「日本戦より“ひどい試合”がある」ドイツ人ベテラン記者が振り返る、代表史上最悪&ベストゲーム「2014年優勝の時にメッシが…」<ドイツ代表1000試合>
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bydpa/JIJI PRESS
posted2023/06/28 17:01
6月12日に通算1000試合目を戦ったドイツ代表。長年ドイツ代表を見守ってきた記者・リポーターに「忘れられない試合」を聞いた
ラインエッケ「効果的なプレーができない。ものすごい労力をかけてチャンスを作ろうとしてそれでいてゴールの数が増えてこないし、失点はあっさりしてしまう。これは問題だ。費用対効果が悪すぎる。まさに日本戦がそうだったじゃないか。日本は完ぺきとは言えないが組織で情熱的に守備をしてきた。根気強くスライドしてスペースを消して、競り合いでも粘り強かった。そんな日本相手にドイツはゴールを決めきれない。特にボールロストの場所とタイミングが良くないし、ボールを失ってから自陣に戻るスピードもタイミングも遅い。ブンデスリーガで残留争いしているチームの方がこの点に関してはもっといい動きをするよ。ドイツが不用意な形でボールを失うのを日本が虎視眈々と狙い続けていたのはわかっていたはずなのに」
試合後、『こんなはずはなかった』と選手、監督、ファンもみんながっかりしていたが、そうならないための準備が果たしてどこまでできていたのか。多様性をアピールするための虹色のキャプテンマークをつけるかどうかが試合開始直前まで話題に上がるなど、《万難を排して臨む》ことはできていなかった。
最後はドイツが勝つ、ではなく…
「だからこそ日本代表に敗れたあの試合を、大きな変革へのきっかけとして捉えるべき」とベルグナーは強調する。
ベルグナー「あの試合はドイツ代表の歴史においても、とても意味深いものなのは間違いない。結果としてあの試合に負けたことがグループリーグ敗退の直接の要因となったのだ。だからこそ、あの試合に負けたということから、正しい学びをすることが大切なんだ。
たぶんね……私たちは認めて、慣れることが必要なのかもしれない。ドイツ代表はいまそこまで強いわけではないという事実に。かつてイングランド代表FWガリー・リネカーは『フットボールは単純なスポーツだ。22人の選手が90分間ボールを追いかけ、最後はドイツが勝つ』という有名な言葉を残した。ここ最近は逆だ。最後にいつもドイツが負けている。今はそういうことなんだ」
栄枯盛衰の必然
変革には時間がかかる。様々な障害を乗り越えなければならない。偶然が絡み合って好成績を残せる大会もあるだろう。02年日韓W杯で準優勝したドイツのように。でもそれは残らない。コンスタントにハイレベルを保つためにどうしたらいいのか。そこがポイントになる。
ベルグナー「フランスはいま世界の強豪国の一つだが、98年自国開催のW杯で優勝するまで20年近くうまくいっていなかった。W杯や欧州選手権に出られないことさえあったんだ。イタリアだって、ポルトガルだって、オランダだってそうだ。でもそこから彼らは学んだ。ドイツだってそうだった。苦しい時代はどの国にもある。ずっとうまくいくということもない。だから正しい道を見つけて、いつでも取り組み続けていかなければならないんだ。ドイツサッカー協会が事実を正しく認識し、徹底的な分析をして、正しい決断をしてくれることを祈るばかりだ」
積み上げられた1000試合の代表戦。そしてまた時計の針は進んでいく。良い時代も、悪い時代も、心地よい時代も、憤怒を抱く時代もくるだろう。日本代表と再び大舞台で対戦する日もくるはずだ。今度はお互いどんな状態で対戦するのだろう。歴史は、サッカーはこれからもずっと続いていく。
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