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ヌートバーはなぜ“日本でも米国でも”愛される?「チーム精神」の裏にあった“2人の師匠の教え”「彼らのように上手くなりたいんだ」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byAFLO
posted2023/04/05 11:30
カージナルスの同僚・キズナーと笑顔でハグするラーズ・ヌートバー(2022年)
日本のファンの皆さんも、WBC決勝の米国戦は記憶に新しいだろう。村上宗隆と岡本和真が本塁打を放ち7投手の継投で辛勝したが、決勝点を叩き出したのはヌートバーだった。
1−1の2回1死満塁。米国内野陣は通常の守備陣形を敷いた。この時点で彼の考えは決まった。
「最悪でもインプレーを生むこと。走者を動かせば1点入ると思った」
開幕後、セントルイスでの言葉だ。
この場面。打者として、“してはいけないプレー”が3つある。最悪は併殺打、次が三振、内野フライなどインプレーを生まぬアウトも同様だ。理想を挙げれば、本塁打、適時打、犠飛など多くあるが、三塁走者を本塁へ返せないことが一番良くない。相手内野陣が後ろに守った時点で内野に転がせば彼の足ならば併殺打はない。『一ゴロでの勝ち越し打』には彼のそんな思慮が隠れている。凡打ではなく『プロダクティブ・アウト』。評価される打撃だった。
開幕戦で見えた“必殺仕事人”ぶり
メジャー3年目にして開幕初スタメンを勝ち取った3月30日のブルージェイズとの一戦でもヌートバーは仕事を遂行した。2番打者で4打数1安打2四球1得点1三振。派手さはないが6打席3出塁で繋いだ。後を打つのは昨季MVPのゴールドシュミットであり、30本塁打以上7度を誇るアレナド。9-10で惜敗したものの、3出塁はすべて得点にも絡み、ヌートバーは言った。
「望んでいた結果ではなかったが、次の試合に繋げられるようなポジティブなことがたくさんできた。今日のことから多くのポジティブなことを得られたと思う」
最も光る仕事は6回だった。左腕メイザに対し、1番のドノバンが左前打。ヌートバーは言った。
「(左打ちの)ドノバンがいい仕事をし、左打者の僕にいいアイディアをくれた」
外角低めへ逃げていくスライダーを逆らわずに左前へ運びゴールドシュミットの右前適時打へと繋いだ。2死からの攻撃はいずれも逆方向への単打で繋がれた。昨季から根付いた『ペッパーミル・パフォーマンス』の由来もここにある。
米国で『ペッパーグラインダー』と呼ばれるパフォーマンスは「Grind」(コツコツ繋ぐ)の意味からなる。チーム一丸。価値観を共有する攻撃はまさに『打線』と呼ぶにふさわしい。これがカージナルスの野球だ。