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“中学までに挫折した部員”が選手権優勝…岡山学芸館・高原監督が語る“健全な競争と100分トレ”「日本一熱い球技大会と呼ばれてます」 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/03/06 11:19

“中学までに挫折した部員”が選手権優勝…岡山学芸館・高原監督が語る“健全な競争と100分トレ”「日本一熱い球技大会と呼ばれてます」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

第101回の全国高校サッカー選手権を制した岡山学芸館。監督などに現地取材して日本一までのプロセスを聞いた

  “エリート軍団”へのライバル意識も選手のモチベーションを高めている。所属するプリンスリーグ中国には、J2ファジアーノ岡山U-18も属している。ファジアーノの中には岡山学芸館に通う選手もいるため、両チームの選手が一緒に学校生活を送っているのだ。高原監督は言う。

「ファジアーノとの試合は日本一熱い球技大会と呼ばれています。相手はプロの下部組織というプライドがありますし、うちも負けたくないのでバチバチの戦いです。プリンスリーグで戦うクラブチームと高体連のチームが対戦するのは珍しいケースだと思いますが、チーム力の向上につながっていると感じています」

チーム全体で動く時間は1日2時間にも満たない

 岡山学芸館の中には、ファジアーノのユースに上がれなかった選手もいる。ユースは別世界で小中学校の頃に町クラブで育った選手も多い。「高校では立場を逆転させる」。かつての劣等感はハングリー精神に変わった。チーム内外で激しい競争を生む仕組みができ上がっている。

 ハードワークを特徴とする岡山学芸館のスタイルを見ると、日頃の練習量が他校を圧倒しているとイメージするかもしれない。しかし、決して練習時間は長くない。1週間のスケジュールは月曜日が自主練習、火曜日がフィジカルトレーニング、水・木曜日が全体練習で金曜日は調整して土日の試合に臨む。掲げているのは「100分トレーニング」。チーム全体で動く時間は1日2時間にも満たない。

 100分トレーニングは、熊本県の大津高校を指揮する平岡和徳監督の方針を高原監督が参考にして取り入れた。全国屈指のサッカー強豪校を作り上げ、多数のプロ選手を育てている平岡監督は、高原監督にとって憧れの指導者の1人だという。「人間はゴールが見えないと頑張れない」。平岡監督の言葉から、高原監督は短期集中の練習へ方針転換した。

「自分の選手時代を振り返っても、何時に終わるんだろう、まだ続くのかと思いながら練習していました。短時間でゴールが分かっていると、練習の質は上がります。指導する立場でも、長時間集中するのは難しいと感じます」

「腹八分目」の練習を意識させるメリットとは

 勝負は100分間。選手はゴールに向かって力を出し切る。高原監督やコーチ陣は選手の動きに集中して、チームを作り上げていく。時間が限られているからこそ、1分1秒を無駄にしない気持ちが強くなる。

 高原監督は「以前の練習は多少ダラダラしても仕方ないという感じでした。プレーの強度など、質の追求が欠けていたと思います」と振り返る。今は「腹八分目」の練習を意識する。選手に「もう少し練習したい」という感覚が残ると、自主性につながるという。

【次ページ】 フィジカルトレーニングも数値化している

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岡山学芸館高校
高原良明

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