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三笘薫は「計算され尽くした走り方」「筋肉バランスがいい」陸上レジェンド・朝原宣治が語る“相手を置き去りにする”異次元スピード分析
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byGetty Images
posted2023/01/24 06:00
朝原宣治氏「三笘選手の走り方はあらゆるスポーツで理想形といえます」
朝原 スラロームの選手たちは下半身だけくねくね動かしているように見えますよね。あれは身体の重心が左右に振れないようにするためなんです。三笘選手の場合もスラローム選手のように、上半身を安定させながら下半身を柔軟に動かせる。身のこなしが優れているんですね。だからスピードを落とさずに走れるのだと思います。
――なぜそうした動きができるのでしょうか。
朝原 背骨がよく動き、柔らかいのだと思います。背骨をS字にカーブさせながら、スムーズに左、右に方向転換できる。だからディフェンダーの数や間合いを見て、さっと避けられる。実は陸上でも同じことが言えて、たとえばウサイン・ボルトの200m走を見ると、コーナーカーブの際に姿勢がブレていないんですよ。目線は地面と並行のままで、背骨だけS字に曲がっている。そのあたりの上半身、下半身の連動性は三笘選手と共通していますね。
「筋肉のバランスが極めていい」
――「緩急」と「身のこなし」を生かした走りが、あの自由自在なドリブルを生んでいるわけですね。
朝原 ボールコントロールや相手のポジショニングなどの空間認知の要素がずば抜けていることが前提ですが、走りについていえばそう思いますね。共通しているのは身体の連動性。初速、緩急、身のこなし……と計算され尽くしたように、身体のあらゆる部分が無駄なく連動しているのがわかります。身体もバランスよく鍛えられてますもんね。
――ヨーロッパに移籍後、海外選手に当たり負けしないように、重点的に肉体改造をしたそうです。
朝原 筋肉のバランスが極めていい。一部が大きすぎたり、極端に細かったりしないので、身体の連動性を意識した筋トレをしていることがうかがえます。三笘選手の発達した僧帽筋(首から肩、背中にかけて広がる筋肉)を見ても、スナッチ(全身の筋肉を使ってダンベルなどを頭上に持ち上げるトレーニング)とか、引っ張る系の筋トレを重点的にやっているのかなと。ボディコントロールの面では理想的な筋肉のつけ方だと思いますよ。
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