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「決してガードを下げてはいけない」ラグビー日本代表はオールブラックスに付け込む隙はある? ジェイミー・ジョセフが語る“4年ぶりの決戦” 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/10/28 06:01

「決してガードを下げてはいけない」ラグビー日本代表はオールブラックスに付け込む隙はある? ジェイミー・ジョセフが語る“4年ぶりの決戦”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

母国であるニュージーランドとの決戦を前に、意気込みを語ったラグビー日本代表HCジェイミー・ジョセフ

「自分たちはどこからやって来て、なぜここにいるのか。それを知ることはとても大切です。現在のオールブラックスはダイバーシティ、民族の多様性がそのままチームに反映されています。ニュージーランド人、サモア人、パシフィック・アイランダーといった様々な民族の人たちが、お互いのカルチャーをリスペクトしてひとつの社会を作る。私が代表の選手だった90年代にそうした発想、教育はありませんでした」

 ジェイミー自身は大家族の中で育ち、家族の絆は深い。

「父は北島の出身で、南島に移住し、母と出会いました。母は21人という大家族の一員です。マオリ語でファカパパという言葉があります。これは自分たちのルーツが記されたもので、次世代へと伝承されていきます。私の先祖はカヌーを漕いでニュージーランドにやってきたんですよ。先祖を知ることは文化としてとても大切なことです」

 ジェイミーは、日本代表の選手たちも自分たちの先祖を知り、それを力とするように導いてきた。

「自分が代表の一員としてプレーするということは、先祖や家族、そして自分が育った山や川、そうした要素を代表していることになります。自分のルーツ、故郷を知ることは、ひとりではなく、いろいろな人の思いを背負って戦っていることになり、それは人間としての強さにつながります」

母国と対戦「いまはもう、特別な感情はない」

 そして日本は、ジェイミーにとって大切な国になった。99年に平尾誠二率いる日本代表の一員として、W杯ウェールズ大会に出場(当時は3年居住の条件を満たせば複数国の代表になれた)。現在は日本の指揮官として、母国を迎え撃つ立場にある。

「指導者になった当初であれば、オールブラックスと対戦することに多少、特別な感情が芽生えたかもしれません。しかし、いまはもう長い間日本代表のコーチングに携わってきたので、特別な感情が生まれることはありませんね」

【次ページ】 4年前は大敗「決してガードを下げてはいけない」

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