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大谷翔平が「えぐい」と自賛した“第二の魔球”ツーシームの威力とは? 敵将も「どう対策を立てていいのか、本当にわからない」 

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阿部太郎

阿部太郎Taro Abe

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posted2022/09/20 17:02

大谷翔平が「えぐい」と自賛した“第二の魔球”ツーシームの威力とは? 敵将も「どう対策を立てていいのか、本当にわからない」<Number Web> photograph by Getty Images

9月3日のアストロズ戦で100マイル前後のツーシームを多投した大谷翔平。8回111球を投げて1失点、5奪三振と「打たせて取る」場面も目立った

 では、スライダーを多投した理由とは。大谷自身は「試合前のプランもあるし、試合をやっていく中で打者の反応を見ながらというのもある」とだけ言った。

 マドン前監督の分析はこうだった。

「彼が打者相手に感じたことが、投球に反映したのだろう。翔平はスカウティングレポート通りに投げる投手ではないから。うまく打者の気持ちを感じて、嫌がる球を投げる。それが彼の天才的なところだよ」

スライダーを投げ分けて13奪三振の快投も

 この一戦は大谷に、大きな自信をもたらしたと思われる。ここから、スライダーが軸の投手に変わっていった。

 相手が待っていても、なかなか対応できないその球は勝負球にもなった。また80マイル台前半から90マイル程度まで球速にも幅があり、制球が効くため、カウント球にもなった。

 バッテリーを組むマックス・スタッシも「スライダーを投げるのが、大谷にとっては心地いいのだと思う。カウントも整えられるし、彼はいろんな球速のスライダーが投げられるからね」と話したことがある。

 今季のハイライトのひとつ、2本塁打を含む8打点を挙げた翌日のロイヤルズ戦(6月22日)も、その球が冴えた。キャリアハイを塗り替える13奪三振の快投だったが、108球中、46球がスライダーだった。

 象徴的な13個目の三振は、この試合最後の1球。

 腕を少し下げて投じた86マイルの曲がり球に、相手打者のエマヌエル・リベラは一瞬、のけぞった。「当たる」と思ったのだろう。鋭い変化をしたそのボールは、しかし、外角高めぎりぎりに決まった。

後半戦、大谷が用意していた予想外の“新球種”

 だが、シーズンは長い。意識的なスライダー偏重は、後半戦に入って少し行き詰まりの兆候を見せ始めていた。

 後半戦の初戦から3連敗。

 特に3連敗目を喫した8月3日のアスレチックス戦は、スライダーに頼り切った配球が苦しさを際立たせた。

 99球中61球、半分以上がスライダーだ。「何が一番いいのか、チョイスして投げた」と語った大谷だが、この傾向が続くと、さすがにメジャーの打者は慣れてくる。特に3巡目となると、抜ける球も目立ち、高めに浮きがちになる。

【次ページ】 「ツーシーム、えぐい」とベンチで自画自賛

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