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大谷翔平が「えぐい」と自賛した“第二の魔球”ツーシームの威力とは? 敵将も「どう対策を立てていいのか、本当にわからない」
posted2022/09/20 17:02
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
「今まで見た中で、一番の投球かもしれない」
エンゼルスのジョー・マドン前監督が興奮気味にこう語ったのを、今でも鮮明に覚えている。
「彼は1球目からゾーンに入っていた。球の切れ、鋭さはなんて表現すればいいか……。言葉にできない」
今季4月20日、敵地ミニッツメイド・パークでのアストロズ戦。大谷翔平はアレックス・ブレグマン、ヨルダン・アルバレスら強打者が居並ぶ打線を全く寄せ付けなかった。当時のキャリア最多タイとなる12奪三振で、6回1死までパーフェクト。
ひょっとしたら、佐々木朗希のようなインパクトを、メジャーの舞台で残してしまうかも……と思った直後、左打者のジェイソン・カストロにしぶとく、中前へ落とされた。
これがアストロズのこの日唯一の安打だった。
6回無失点で降板した本人は試合後も冷静そのもので、「球数が多かったので9回まではいかなかったと思う」と語った。完全試合の意識はなかったが、投球の手応えは表情で分かった。
「メジャーでは一番の投球かも」
今季初勝利を挙げたこの試合は、「投手・大谷」の新たな顔を見せた一戦だった。
思わずつぶやいた「あのスラはやばい、打てない」
スライダーの割合が43%。
先のアストロズ戦で大谷が投じた全81球のうち、実に半分近い35球をこの球が占めた。今季3試合目で、初めてフォーシームの割合をスライダーが超えた。
その変化量も驚異的だ。データを見ると、横の曲がり幅は最大20インチ(50.8センチ)にも達していた。
「あのスラはやばい、打てない」と、なじみの記者につぶやいた記憶が残る。
大谷の場合、フォームは真っすぐに踏み出さず、左足は三塁側にインステップする。そこから、「わざと」肘を下げて投げることもあった。
右打者は自身に当たりそうになる球が、急激に曲がって外のボールになる感覚だろう。
この魔球に、アストロズ打線の右打者は面食らったような空振りを繰り返した。