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大谷翔平が「えぐい」と自賛した“第二の魔球”ツーシームの威力とは? 敵将も「どう対策を立てていいのか、本当にわからない」
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2022/09/20 17:02
9月3日のアストロズ戦で100マイル前後のツーシームを多投した大谷翔平。8回111球を投げて1失点、5奪三振と「打たせて取る」場面も目立った
8月、9月と、大谷はどういう投球をしていくのか。スプリットを増やすのか、フォーシームを増やすのか。
しかし大谷は、こちらが勝手に思案した想像とは全く別の答えを出した。“新球種”という次なる一手を用意していたのだ。
これまでメジャーで投げていなかったツーシームを、8月中旬から本格的に使い始めた、今季第二の魔球が、投手・大谷のギアをもう一段階上げた。
「ツーシーム、えぐい」とベンチで自画自賛
9月3日と10日のアストロズ戦での登板は、まさにそのツーシームが相手の気勢をそいだ。
いずれの試合もスライダーの次に多く投げ、3日は18球、10日は20球。3日の試合では最大の曲がり幅が21インチ(53.3センチ)に達し、本人がベンチに戻って「ツーシーム、えぐい」と自賛したほどだった。
この武器が、アストロズ打線を困惑させた。特に右の好打者が多い打線は、100マイル近い速度で内角に食い込み沈むツーシームになかなか踏み込めない。
ツーシームを見た後に、今度は鋭い変化で外に流れるようなスライダーがくる。リーグ最高勝率を誇る抜け目のない打線が2週続けて、大谷に料理された。
「すごく頭を使う球団。今年は対戦が多かったが、単純に自分のやりたいことだけをやって抑えられる相手ではない」と語った大谷。前半戦で1球も投げなかったツーシームを切り札にして、見事に勝利への道筋を描いた。
9月10日の敵地での試合。大きく変化して内を突いた98.5マイルのツーシームに、中途半端なスイングで空振りした好打者のホセ・アルトゥーベが、思わず苦笑いを浮かべたシーンは象徴的だった。
50年以上もメジャーで生き抜くアストロズの名将ダスティ・ベイカー監督はこう言っていた。
「大谷は打つのが厄介でタフな相手だ。みんな、どうやって対策を立てているのかと簡単に聞くけど、本当にわからないんだよ」
今季アストロズは、エンゼルスと19試合戦って6敗しかしなかったが、そのうち4度は大谷が投げた試合だ。
新たな可能性を探って、変化する怪物。
シーズンも佳境だが、まだ、何かを用意しているのか。また、別の顔があるのか。
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