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「子どものサッカーのために借金」支援を受ける31%が回答…新品のスパイクを買えない親たちの“悲痛な本音”「生きるのに精いっぱい」 

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中小路徹

中小路徹Nakakoji Toru

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photograph byGetty Images

posted2022/04/21 06:00

「子どものサッカーのために借金」支援を受ける31%が回答…新品のスパイクを買えない親たちの“悲痛な本音”「生きるのに精いっぱい」<Number Web> photograph by Getty Images

「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むこと」は、すべての人々の権利だ。しかし、現実には、貧困や社会格差のために、スポーツを存分に楽しめない子どもたちがいる

 母親は、一人親を支援する団体を通じて、この奨励金の存在を知った。「お金が理由でいつまでもサッカーができない、ということにならずによかったです」

 それでもユニホームのインナーは2セットを買えず、長男は「アウェー用はいらない」と言ったそうだ。今年1月の雪の日、練習試合ではアウェー用を着ることになったが、長男は半袖のユニホーム一枚で頑張った。

支援を受ける母「貧しさが続くと、どんどん孤立していく」

 奨励金の給付は、love.fútbol Japanが昨年度から始めた「子どもサッカー新学期応援事業」の一環だ。

 経済的な貧困や社会格差によって、サッカーを諦めていたり、続けるのが難しかったりする子どもを応援するため、年度初めに1人あたり、5万円を給付する。希望者には、スポーツメーカーの廃棄用品を寄贈する。

 試合への招待もある。長男は埼玉スタジアムでのW杯予選・日本―オーストラリア戦と、国立競技場での天皇杯決勝を観戦した。

 初めてのスタジアム観戦だった。「選手たちはお互い、励ましの言葉をかけあっていました。僕も部活で大きな声で励ましの言葉をかけて見習いたいと思いました」。長男は同法人にそんな感想を寄せた。

 長男が中学2年になったこの新年度も、引き続き、支援を受ける。「サッカーをやると、子どもに友人ができる。それが大きい。貧しさが続くと、どんどん孤立していく。そういうことが避けられますから」と、母親は話した。

 love.fútbol Japanの応援事業は、昨年度は26都道府県の98人への支援につながった。さらに、今年度は奨励金は3万円とし、対象は38都道府県の248人(193世帯)に広がっている。

受益世帯の31%「子どものサッカーのために借金」と回答

 どんな層に支援が必要なのか。同法人が受益世帯から聞き取ったデータが、如実に物語る。

 母親の一人親世帯が85%を占め、年収200万円以下が57%。支援によって実現できることについては、「サッカーを続けることができる」が58%と最も多かったが、「諦めていたサッカーを始められる」が19%、「やめていたサッカーを再開できる」も8%あった。

「昨年度は31%が、『子どものサッカーのためにお金を借り入れたことがある』と答えています」

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森谷賢太郎

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