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スノボ芳家里菜が脊椎損傷…「防弾氷」のように硬い北京五輪“人工雪コース”の大きなリスク《極寒と風でアクシデント続出》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2022/02/10 17:02
スノーボード女子スロープスタイルとビッグエアの代表だった芳家里菜は、2月3日の公式練習中に転倒。脊椎損傷(麻痺なし)という大怪我を負った
それ以外の競技を含めても、雪面の硬さに対して「怖い」と語る選手がいたり、あるいは雪質の違いからいつもの滑りができず苦しむケースが見受けられた。
経験豊富な選手たちが「今までの大会でいちばん寒い」
人工雪そのものについては、評価する意見もある。というのも、世界的な雪不足により、大会を開催できる地域は減少傾向にある。それを解決する方策となり得る点は大きなメリットだ。先に記したように、平昌をはじめ近年のオリンピックでも人工雪は用いられているほか、欧州での雪上競技でも導入されている。
ただ、北京五輪では、極度の低気温という条件が重なった。世界各国を転戦した経験が豊富な選手たちからも、「今までの大会でいちばん寒く感じる」という声が上がるほどの気温とあいまって、人工雪を主としたコースが恐怖心を抱かせる。風も体感温度の低さを助長する。恐怖、寒さ、雪質の違い、思うように動かない体……それらが負傷などのアクシデントや、万全のパフォーマンスを発揮できない状況を生み出している。
北京五輪の雪上競技は、そうした難しいコンディションのもとで行なわれている。大会ではこれからも、さまざまな競技が実施される。
北京ならではの難敵とも向き合い、選手たちは4年に1度の大舞台に挑むことになる。これ以上のアクシデントが生まれず、多くのアスリートが本来のパフォーマンスを発揮できるよう、祈りたい。
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