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大逆転負けから4年、平野歩夢が実行した“採点競技の勝ち方”…ショーン・ホワイトと「同じようなフィニッシュ後の表現はできない」
posted2022/02/10 17:03
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
北京から北へ約180キロ。スノーボード男子ハーフパイプ予選が行われる張家口・雲頂スノーパークに向かう早朝の高速鉄道には、北京五輪が始まってから最多と見られる人数が乗車していた。報道陣用のシャトルバスも満員。たどりついたメディアセンターは超満員。机を確保できないメディアが続出していた。
これまで予選ではフリーパスだったミックスゾーンでの取材にも特別チケットが必要。耳を澄ませば英語、中国語、韓国語、ドイツ語など、いくつもの言語での会話の中で「ヒラノ」「ジャパン」という固有名詞が聞こえてきた。 「ショーン・ホワイト」「スコッティ・ジェームズ」という名前も聞こえる。
“驚愕のエア”に会場がどよめいた
狂想曲が始まろうとしていた。
長さ220m、幅22m、斜度18度、パイプの壁の高さ7.2m、パイプの縁から下への角度82度。パイプを見上げる招待客や関係者、報道陣、誰もがワクワク感にあふれる表情をしていた。
一番手に登場したのは2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)。ドロップインから最初に繰り出したトリックで、「おぉー」というどよめきが広がった。
高い。滞空時間の長さはそれだけで胸を震わせ、宙に浮かぶ様は芸術的ですらある。
圧巻は2本目だった。最初のトリックから「フロントサイドダブルコーク1440」と、「キャブ(逆)ダブルコーク1440」の連続技をメイク。銀メダルだった平昌五輪の決勝2本目に五輪史上初めて成功させた技を冒頭に入れ、鮮やかに決めた。
続く3つのトリックもすべてダブルコーク(縦2回転)をそろえ、手堅く滑った1本目を大きく上回る93.25点を出した。
取材エリアの平野は、上機嫌な顔を見せながらもいつもの彼らしく落ち着いた口調で「まず1本目を決められて良かったなという安心感はありました」と言い、2本目のトリック選択についてこのように説明した。