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スノボ芳家里菜が脊椎損傷…「防弾氷」のように硬い北京五輪“人工雪コース”の大きなリスク《極寒と風でアクシデント続出》
posted2022/02/10 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
2月4日に開会式が行なわれ、1日1日と競技が進められている北京五輪。さまざまな活躍が見られる一方で、いくつかのアクシデントが影を落としている。
開会式前日の2月3日、スノーボード女子スロープスタイル、ビッグエアの2種目の代表だった芳家里菜が公式練習中に転倒。脊椎損傷の大怪我により欠場を余儀なくされた。芳家は幸いまひが残らず、当地で手術を行なったこと、治療ののち帰国することを報告している。
2月5日にはスキー・フリースタイル女子の近藤心音がスロープスタイルの公式練習中に転倒、右膝外側側副靱帯損傷などの怪我を負った。そのため、7日に予選が行なわれるビッグエアを欠場し、13日に予選が行なわれるスロープスタイルについては出場を目指しているという。ただ、大きなハンディを負ったことに変わりはない。
人工雪と低い気温によって生じるリスク
実は北京五輪には、大会の前から懸念されていることがあった。「人工雪」がベースになっていることだ。雪上競技が実施されるエリアは、北京からかなり離れたところにあるが、雪が少ない地域であるため人工雪を主にコースを仕立てることになっていた。人工雪自体はこれまでのオリンピックでも使用されてきてはいるが、北京五輪の雪上競技のエリアは非常に気温が低い地域でもある。人工雪と厳しい寒さ、ふたつの要素が重なる点は、他の大会と異なっている。
おおまかに言えば、天然雪と比べ、ざらついた人工雪はクッション的な役割という面で劣ると指摘される。それに輪をかけて、マイナス20度前後まで下がる気温に冷やされ硬くなる。ビッグエアやスロープスタイルなどのように、大きなジャンプを行なう競技で転倒した際のリスクが懸念されていたのだ。