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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
《グルグルFKに南米もビックリ》ブラジルの人気スポーツ番組が選手権を特集!?「伝統とイノベーションが織りなす大会」「奇妙だが愉快」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/01/10 17:02
年末年始の定番である高校サッカー選手権。ブラジルの人気フットボール番組でも高川学園の「トルメンタ」が取り上げられている
スペイン語メディアの多くは、このプレーを「トルベリーノのような」などと表現している。プレーはともかく「トルメンタ」という名前の方はあまり伝わっていないようだ。
筆者が確認したところ、南米10カ国すべてにおいてトルメンタが動画なり文字情報で報道されていた。
さらに、高川学園が2回戦(対岡山学芸館)で3人ずつ2組に分かれてグルグル回ってからの得点、3回戦(対仙台育英)で6人が固まってから分散し、相手CBが頭でクリアしたところをボレーシュートで決めた得点といったトルメンタの別バージョンも報道された。
日本人が想像している以上に、このプレーの反響は大きい
南米のみならず、欧州各国のメディアも、こぞって高川学園のトルメンタを取り上げている。それでは、一体、世界中でどのくらいの人がこのプレーを見たり聞いたりしたのだろうか。
モルデというノルウェー1部のクラブで戦術分析官、アカデミーのコーチを務めるエリック・ローリーという人が、自身のツイッターで「控えめに言っても、面白い!初めて見たら、阻止するのはほぼ不可能だろう」というコメントと共に星稜戦の動画を転載している。1月9日時点で、この動画の再生回数は816万回を超える。
このことから推察すると、このプレーを動画で見たり文字情報で知ったりした人は世界中で数千万人を優に超えるのではないか。
日本人が想像している以上に、このプレーの反響は大きい。世界中で「タカガワ・ガクエン」の名前が知られ、「日本の高校のフットボールは意外性に富んでいて面白い」というイメージが拡散しているはずだ。
“グルグル”の元祖はフィンランド?
このプレーを日本で行なったのは、高川学園が初めて。昨年9月、エースストライカーの中山桂吾(3年)が提案して練習を重ね、11月7日に行なわれた山口県予選準決勝(対聖光)で敢行したのが最初だった。
ただし、高川学園が発明したプレーというわけではないようだ。
2013-14シーズンにフィンランドのフットサルの試合で右CKのチャンスに3選手が手とつないでグルグル回って相手を攪乱。ただし、キックが流れてしまい、得点には至っていない。
昨年末にも、イングランド3部のロザラム・ユナイテッドが右CKの際にペナルティーエリアで5選手がグルグル回ったが(ただし、手はつないでいない)、ボールはサイドへ流れている。
昨年7月に行なわれた女子のフランス対スペイン戦で、フランスが右CKを得た際に5選手がペナルティーエリアのすぐ外の半円付近でグルグル回り(ただし、手はつないでいない)、キックの瞬間に各々がゴール方向へダッシュ。ボールがファーサイドへ流れたところを円陣の中にいた選手が折り返し、これをやはり円陣の中にいた選手が決めた。
相手守備陣を驚かせてマークがずれ、それによって生まれたゴールであり、このプレーの効果が出たと考えていいだろう。
ただし――その後、欧州や南米の強豪クラブや代表でこのプレーが多用されたわけではない。