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元「高校生Bリーガー」東海大の20歳、河村勇輝が3年目のBリーグで見せた“泥臭い”成長《合流4日目で即試合出場》
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byYuki Suenaga
posted2021/12/31 06:02
12月25日の琉球ゴールデンキングス戦のあと、ともに入団したキング開と一緒に入団会見を行った河村勇輝(左)
大倉を筆頭に、八村阿蓮(群馬クレインサンダーズ)、佐土原遼(広島ドラゴンフライズ)といった粒ぞろいの戦力を備えた東海大は、秋のリーグ戦こそ優勝を飾ったが、春の関東選手権と冬のインカレは共に準優勝に泣いた。河村は関東選手権の最終日は「敗戦の一番の責任は自分にある」と言い、インカレでは「自分がゲームを壊してしまった」と言葉を詰まらせていた。
ただ、大学のシーズンが終わり、挑戦の場所をBリーグに移した今は、この逆境を成長の糧にする心づもりをしっかりと持てている。
「大学2年目は苦しいシーズンになったと思いますが、『自分がコートでやらなきゃいけない』という責任感がつきましたし、ゲームコントロールについても多くのことが学べたと思います。この苦しさは今後に活かしていける経験だと思っています。Bリーグという素晴らしい舞台で悔しさを払拭できるように頑張っていきたいです」
また、3年目となる特別指定選手としてのプレーでフォーカスするものについては、以下のように語った。
「3年目ではありますが、学生という身分で試合に出させてもらっているのは変わりないですし、フレッシュマン(新人)という気持ちは絶対に忘れてはいけないと思っています。その中で泥臭くルーズボールを追い、今年大学で磨いてきた強度の高いディフェンスで相手を嫌がらせたいですし、何より、ガードとしての成長をたくさんの方にお見せできるようにしたいです」
力強いプレーで見せた進化
河村のルーズボールとディフェンスへの意欲は、この試合でもストレートに表現されていた。フィジカルとスキルを備えたベテランの並里と、河村より身長が15センチ高く圧倒的な身体能力を持つコー・フリッピン。河村はタイプの異なる琉球の好ガードたちにベッタリと貼り付いて自由にプレーさせず、ルーズボールへのダイブでチームにエナジーを与えた。
昨季までのスピーディーかつ華麗なオフェンスのイメージを覆す、力強く、粘り強いそのプレーは、河村の確かな進化を象徴するものだった。ここに元々備えているスピードやアシスト力、大学で苦戦したゲームコントロールやアウトサイドのシュート力などを絡み合わせて、「ガード」としての全体的なステップアップを目指していく。
横浜は、河村の特別指定選手契約と併せて、地元・横浜市出身の好ガード、キング開(専修大4年)とのプロ選手契約も締結した。ほぼ2人でPGを回す苦しい台所事情から一転、青木勇人ヘッドコーチは「うれしい悲鳴といいますか…」と顔をほころばせ、「キング選手はコンボガード(コントロールと得点の両軸を担う選手)としても期待できますし、いろいろな組み合わせが試せるんじゃないかと思います」と話した。
東地区9位と苦境が続く横浜だが、この試合やその前節の滋賀レイクスターズ戦を経て、チームは少しずつ上を向きつつある。2人の新たな風たちが帆を大きくはらませ、よき航海をもり立てることに期待したい。
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