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「フットサル場に飛び入り参加すると…バレます(笑)」松井大輔40歳、なぜJリーグ復帰ではなくFリーグに?《南アW杯日本代表の決断》
posted2021/09/15 11:02
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Kentaro Takahashi
一般的に、フットサルという競技から連想するものはなんだろうか。
縦の長さ約40mというコートは、サッカーのピッチの半分以下である。そこで、ゴレイロ(GK)1人を含む1チーム5人、両チーム合計10人の選手たちが駆け回る。自ずとサッカーよりも個々の選手がボールに触れる機会が増え、また狭小スペースで正確な技術が必要となる。
いまや大衆に普及したこのスポーツを、なぜにあらためて説明したのかというと、この程、サッカー元日本代表MF松井大輔(40)が今秋よりフットサルプレーヤーに転身するという話が飛び込んできたからである。
W杯でもフランスでも技術と献身性を両立させていた
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松井と言えば、サッカー界随一のクラッキ(名手)として知られる。足元の多彩な技術を駆使したドリブルのトリッキーさは想像の範疇を超える。そして相手を惑わすフェイク満載のプレースタイルは、真剣勝負の中でもどこか異質な空気を漂わせてきた。もちろん本人にとっては、勝つために繰り出すテクニック。観ているものを魅了し、胸をときめかせる。まさにファンタジスタという名にふさわしい選手だ。
世間的に言えば、ハイライトは2010年南アフリカW杯になるだろうか。
右のサイドアタッカーの位置でレギュラーを掴むと、初戦のカメルーン戦、相手を手玉にとる切り返しから左足クロスを送り、本田圭佑の決勝ゴールをアシストした。以降、ラウンド16のパラグアイ戦でPK戦負けとなるまで、この大会はむしろ献身性が目立っていた。局面では敵を欺くフェイントや攻撃的なプレーは忘れない。
しかし、右サイドを起点に相手ボールを守備で追い続ける様は、汗を掻く戦士そのものである。2004年にフランスのクラブに移籍してから、欧州の舞台で肉弾戦を長く経験し、サッカーは決して美しくプレーするだけではないという本質も味わっていた。だからこそ、世界の檜舞台で泥臭い仕事もいとわず走り続けた。
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五輪にもW杯にも出場した。サッカーの美も現実も、理解している。そんな男が今回、競技の垣根を超え新たなステージに進もうとしているのだ。
なぜに、フットサルなのか。松井にその経緯について、率直に話を聞いた。