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宮崎商、東北学院が甲子園出場辞退…メンタルトレーニング指導士・田中ウルヴェ京に聞く“高校球児のメンタルはどうケアすべき?”
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKYODO
posted2021/08/28 11:01
宮崎商が初戦で対戦するはずだった智弁和歌山。準々決勝では石見智翠館に勝利してベスト4に残った
高校野球などを見ていると、ホテルでも個室に宿泊したり、マスクを二重につけるなどしっかりとした感染対策がうかがえる。しっかり感染対策をした上で、地区大会を勝ち抜き甲子園の切符を手にしたにも関わらず、舞台に立てないまま去った選手もいる。徹底した対策をしていても感染、出場できない可能性は0(ゼロ)にはできない。だからこそ、ハード面での対策に加え、心というソフト面での対策も事前に準備することが必要だ。
関係者全員が“当事者意識”を共有するために
生徒たちに情報を与え、話し合いの場を設けることも重要だ。チーム編成が変わったタイミング、大会に臨む前、そして不運にも陽性者が出た場合などに行う必要がある。
「当然、最終的な意思決定の責任は学校側でしょう。しかし(生徒や学生の成長発達段階の時期にもよりますが)、こうした難しい問題に対して考えて悩む経験を学校側や大人が子供と一緒にできるといいなと思います」
「コロナに関する話し合いは正解がないですし、最適解は個別に異なるはず」と、田中ウルヴェ京さんは話す。何より、生徒たち自身に話し合う機会を与えることには重要な意味がある。
「話し合いのなかでそれぞれが異なる感情、考え方を持っていることを知るきっかけは貴重です。人間には考え方の癖や特徴がそれぞれあります。陽性になった生徒を責めたり、何かしらの不満をもっている場合には、自分の考え方の傾向も再認識することができます。
①現状の問題は何かを具体化する、②あるべき理想の状態は何かを想定する、といったことをみんなで考える。彼らが現状の問題を具体的に考えることで、『そもそも陽性になった生徒へのいじめや差別はおかしいよね』といったことを当事者意識で問題として捉えることができるようになる思考プロセスは貴重です。チーム全員で話し合うこと、大きな難しい課題に取り組むという経験は今後の人生に必ず生かされます」
高校球児に限らない「話し合うこと」の重要性
この思考プロセスで得るものが大きいのは高校生に限らない。パラリンピックに出場するようなトップアスリートたちでも同じだ。