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宮崎商、東北学院が甲子園出場辞退…メンタルトレーニング指導士・田中ウルヴェ京に聞く“高校球児のメンタルはどうケアすべき?”
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKYODO
posted2021/08/28 11:01
宮崎商が初戦で対戦するはずだった智弁和歌山。準々決勝では石見智翠館に勝利してベスト4に残った
「コロナ禍での困難な状況に悩んでいることについて話し合いを重ねることで、オリンピック、パラリンピックの選手の意識、発言、行動にも変化がありました。それまではただ闇雲に『勝ちたい』といっていた選手も、コロナ禍によって本当の競技の目的や、勝負の意味などを深く考えるようになりました。その上でただ勝ちたいだけではなく、『一つ一つ、心をこめてプレーする』『人生の大事な節目として大切に戦いたい』といった言葉の表現が変わり実際の日々の行動も変わっていったことは、とても興味深かったです」
コロナという未曾有の事態だからこそ、子供たちに考え、話し合うきっかけや場をもたせることが大切で、様々な感情があることを認識し、それを言語化して相手に伝える。そしてコロナ禍でスポーツをする理由、意義についても考える、その一連の作業がコロナ禍にはとても重要だ。
「フィジカルトレーナーのように頼ってほしい」
スポーツでのトップパフォーマンスは、心身が一致した際に自然と出てくるもので、その瞬間のために選手たちは日常的に心身を鍛えている。どちらかに陰りがあれば、思うようなパフォーマンスは出てこない。
田中ウルヴェ京さんは「フィジカルトレーナーに頼るようにメンタルトレーナーに頼ってほしい」と話す。
「スポーツでパフォーマンスを向上させるためには、筋肉を鍛えたり、ある意味で『体を傷つける』わけです。それを修復したり、より効果的に鍛えるためにフィジカルトレーナーがいます。
心も同じです。メンタルトレーナーは先行研究で有効性が明らかになっている様々な手法をもとに心を調整する、整えるサポートをします。これまでスポーツ選手は心身ともに健康と考えられていて、メンタルトレーニングと聞くと、メンタル面でもパフォーマンス向上のためにトレーナーを使うものだという認識が多かったと聞きます。0(ゼロ)から上げていくイメージです。
でもこの1年半はコロナ禍で、食べられない・寝られない・普通の社会生活が送れないなどのストレスでメンタル面(の目盛り)がマイナスになる選手が多くいました。『メンタルは弱くてはいけない』と考えてしまうのではなく、もし心が悶々としていたり、揺さぶられるようなことがあったら、メンタルトレーナーに相談してほしいと思います」
1年半近くにわたって続いている新型コロナウイルス感染症。スポーツをしている生徒だけではなく、多くの中高生が多くのストレスを感じながら暮らしている。彼らが心の痛みや傷を話せる環境づくり、そして場合によっては専門家のサポートを受けられる体制づくりも必要だと思う。
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