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年間350日合宿、毎日8時間練習でも8位に敗れた新体操「フェアリージャパン」、17年間の“強化策”で得られたものとは?
posted2021/08/22 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shinya Mano/JMPA
目標には届かなかった。それでも、新体操団体日本代表「フェアリージャパン」は、これまでの長い道のりを歩みながら、確かな前進を見せていた。
今回の五輪を前に、フェアリージャパンにはメダル獲得の期待が集まっていた。2017年世界選手権団体総合で3位となり、42年ぶりのメダルを獲得すると、2019年世界選手権では銀メダルを獲得。さらにオリンピックでは行なわれない種目ごとのボール決勝で史上初の金メダル、フープ・クラブで銀メダルを獲得していたからだ。
しかし、迎えた東京五輪は、苦しい展開を強いられた。8月7日の予選はミスが出て7位。上位8カ国が進出できる翌日の団体決勝に進み、その決勝のボールでは6位につけたが、続くフープ・クラブではフープが2度、場外へ出るミスが出た。得点は29.750、合計でも72.500で8位となった。7月のワールドチャレンジカップモスクワでは得点が89.25だったことから見ても、ミスによる減点は大きかった。
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主将の杉本早裕吏は語った。
「原因がはっきり分からないです。上がる前に何か言葉をかけてあげられていたら、変わっていたかも」
試合が始まる4日前、負傷者が出たことからメンバーが替わっていた。また、大会を前にしての練習も、コンディションの問題から満足のいくところまでできなかったという。今回の結果の背景には、新体操の変化と、その中で表彰台を目指すぎりぎりまでの取り組みがあった。
攻める演技の準備はできていた
新体操は2018年のルール改正でDスコア(技の難度)の得点の上限が撤廃された。つまりたくさんの技を入れれば入れるだけ得点を上げられるようになった。技が終われば次の技が始まる、というほど技が連続し、かつてとは演技が一変した。日本もよく対応し、2019年世界選手権で好成績を収めた。
だが新型コロナによる1年延期の間に、ロシアやブルガリアなど強豪国はさらにDスコアを高めていた。その中でメダルを手にするために、日本もさらにDスコアを高める方向を模索。「まばたきせずに見てほしいです」と杉本が言うほどたたみかけるように技を入れた。時間にして2秒から2秒半の間に1つの技を入れるところまで密度を高めた。当然、失敗のリスクも伴う。それでも、メダルを目指すためには追求するほかなかった。
結果は出なかったが、強化本部長の山崎浩子氏は演技を終えた選手たちを抱きしめて称えた。
試合を終えてどのような思いがよぎっただろうか。山崎氏が強化本部長に就任したのは2004年。現役時代、オリンピックで入賞するなど新体操の知名度向上に寄与した山崎氏は、アテネ五輪の団体出場を逃したことが象徴するように世界に後れをとった新体操の再建を託された。