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《井上尚弥“2世”出現は?》ボクシングの新“登竜門”日本ユース王座が“大豊作”で井上の師・大橋会長も「未来は明るい」
posted2021/07/17 11:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
日本ユース王座というタイトルをご存知だろうか。24歳未満のA級ボクサー(8回戦以上の試合ができる)が争うタイトルで、2017年に創設された。当初は「チャンピオンをまた増やすのか」という冷めた目もなくはなかったが、好試合が続いて現在では立派なタイトルとしてだいぶ定着してきた。スター選手への“登竜門”はいかにして生まれ、これからどんな選手を育んでいくのだろうか。今回はボクシング界の“金のタマゴ”たちの話――。
「これ、下手な日本タイトルよりレベル高いだろ」
「ボクシング界の未来は明るいと思った」
7月8日、試合が終わったあとの後楽園ホールでこう語ったのは今をときめくバンタム級2冠王者、井上尚弥を擁する大橋ボクシングジムの大橋秀行会長だった。この日のメインイベントは同ジム期待のホープ、中垣龍汰朗と関西で評価を上げていた花田歩夢(神拳阪神)による日本ユース・スーパー・フライ級王座決定8回戦だった。
アマチュアで8つのタイトルを獲得し、82勝15敗の戦績を残して昨年デビューしたプロ3戦目の中垣に対し、花田は15歳で単身メキシコに渡り、伝手もなく、言葉もできないなかプロデビューまでこぎつけ、メキシコで4戦全勝、日本に戻って2勝を挙げたまさに“雑草”。背景の異なる2人の若武者が初めて迎えるタイトルマッチは、熱心なファンと関係者の間でなかなか注目されていた。
試合は「これ、下手な日本タイトルよりレベル高いだろ」と声が上がるほどの白熱した技巧のぶつかり合いとなり、花田が7回にチャンスを迎えながら、最終8回に中垣が踏ん張って結果はドロー。中垣は「悔しい」を連発し、花田は「やれるだけのことはやった」と納得の表情を浮かべたのは対照的だったが、この試合内容が冒頭の大橋会長の言葉につながったのである。