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クリーンなダルビッシュでさえ不信感…シーズン中、なぜMLBは急に“不正な粘着物質”取り締まりを始めたのか? 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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posted2021/07/02 06:00

クリーンなダルビッシュでさえ不信感…シーズン中、なぜMLBは急に“不正な粘着物質”取り締まりを始めたのか?<Number Web> photograph by AFLO

6月21日、チェックを受けるダルビッシュ。MLBの“一斉捜査”の背景には、平均打率.239(6月29日時点)という「投高打低」の現状もある。2割3分台に落ち込むのは1968年以来53年ぶり

 その一方で、今回、機構側がこれまでの「暗黙の了解」のグレーゾーンに足を踏み入れた裏側に、これ以上、看過できない部分があった事実も否定できない。特に、問題視されているのが、「スパイダー・タック」と呼ばれる強力な滑り止めで、本来は主にウェートリフティングなど筋力系の競技で使用されていたものが、近年、急速に広まった事情が背景にある。

 指や手のひらに付けると、球が落下しないほどの強力な粘着力があり、これを使用して投球すると、回転数や変化量が大幅に増加すると言われる。「投高打低」対策というだけでなく、不正がはびこることへの抵抗感からも、歯止めをかける目的があったと言っていい。

 今回の対策強化を受け、日焼け止めクリームの使用をやめたレイズのタイラー・グラスノーは、直後の登板で好投したものの、右肘を故障。現時点でトミー・ジョン手術は回避する方向だが、長期離脱を余儀なくされた。

「球をより深く握らなくてはいけないし、2倍くらい強く握る必要があった。これまでやってきたことを変えなくてはならず、間違いなく、このせいでケガをしたと思う」

 オフシーズンから準備できていれば、選手ごとに対策は可能だっただろう。グラスノーに限らず、シーズン途中に突然、規制強化に着手したことへの抵抗感は少なくない。

投手たちが抱く不信感

「暗黙の了解」があるうえで、規制強化に踏み切ったことについて、パドレスのダルビッシュ有は「どうしても度を超す人間が出てくる」と、不正物質が広がっている現状を指摘する。その一方で、過去に「飛ぶボール」を使用したこともある機構側の曖昧な姿勢に関して、「球を替える方が先。急に立場を変えたと感じます」と不信感を隠そうとはしない。

 来季以降も、毎試合、全投手のチェックを義務づけるのか。

 それとも、ボール自体を替えるべきなのか。実現可能かはともかく、日本製のボールを公式球にするという案が、関係者の間では真剣に検討されているとも言われる。

 いずれにしても、不正物質に関する論議は、依然として明確な方向性が見えていない。

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