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クリーンなダルビッシュでさえ不信感…シーズン中、なぜMLBは急に“不正な粘着物質”取り締まりを始めたのか?

posted2021/07/02 06:00

 
クリーンなダルビッシュでさえ不信感…シーズン中、なぜMLBは急に“不正な粘着物質”取り締まりを始めたのか?<Number Web> photograph by AFLO

6月21日、チェックを受けるダルビッシュ。MLBの“一斉捜査”の背景には、平均打率.239(6月29日時点)という「投高打低」の現状もある。2割3分台に落ち込むのは1968年以来53年ぶり

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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 MLB機構が、6月21日から投手の不正使用が疑われる粘着物質の取り締まりを強化した。一部の投手がボールの回転数を上げるなどの目的で粘着性の高い物質を使用している疑惑が広まったためで、先発、救援にかかわらず、イニング間などに審判団がチェックするようになった。

 27日にシカゴで行われた「ホワイトソックス―マリナーズ戦」では、マリナーズの左腕ヘクター・サンティアゴが交代時にチェックを受けた際、グラブに粘着物が付着していたとして、取り締まり強化後、初めての退場処分を下される。疑惑とされたグラブは即座にビニール袋に入れて機構本部のあるニューヨークへ郵送され、専門家による検査に回された。

 当日のシカゴ地方は、気温が30度近く、湿度は約85%。汗が流れ落ちるような気候だった。処分を受けたサンティアゴは、試合後、きっぱりと潔白を主張した。

「ロジン以外は使っていない。汗とロジンが混ざってねばねばしただけだ」

 スコット・サービス監督も「我々は正しいことをしているし、ルールに従っている」と正当性を訴えた。

 だが、2日後の29日、機構側はサンティアゴに対し、10日間の出場停止処分を科すと発表した。同投手はただちにアピール(異議申し立て)を行ったが、どのような検査結果が出てきても処分第1号となった事実に変わりはない。 

滑るボールがゆえの「暗黙の了解」

 そもそも、日本よりも格段に滑る公式球を使用してきたメジャーでは、長年、各投手の滑り止め対策は「暗黙の了解」となっていた。松ヤニのように粘着性の高い物質は回転数や変化量に大きな影響を与えるため、NGとされてきたが、日常生活で使用するスキンケア用のクリームなどは許容範囲内というのが共通認識だった。そもそも、野球規則で認められているロジンバッグも米国製のものは質が悪く、本来果たすべき滑り止め対策としての効果はほとんどないと言われているほどだ。

 それだけに、多くの投手が、日焼け止めクリームやシェービングクリーム、保湿クリームなど、自分に合ったものを事前に調合し、滑り防止のための対策を講じてきた。そうでもしない限り、球がスッポ抜けて制球が定まらず、四球だけでなく、死球が激増して、荒れた試合が頻出する事態になっていたに違いない。

【次ページ】 投手たちが抱く不信感

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