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古賀稔彦次男・玄暉は初出場、出口クリスタはカナダ代表を目指して 五輪イヤーに異例開催の柔道世界選手権に強豪集結!
posted2021/06/06 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
6月6日、ハンガリー・ブダペストで柔道の世界選手権が始まる。
今年は異例の開催となった。
世界選手権は例年オリンピックイヤーには行われていない。今年は新型コロナウイルスによりオリンピックが1年延期となり、同じ年に2つの世界大会が行われることとなった。しかもこの世界選手権の約1カ月後にはオリンピックを控えている。
そのため大会のレベル、みどころという点で危惧する声もあったが、杞憂に終わりそうだ。海外の強豪選手が予想されていた以上に出場してくること、そして五輪代表を派遣しない日本勢も、それに見劣りしない実力者や2024年のパリ五輪を見据える若手など、楽しみな選手がそろったからだ。
パリを目指す、ということで言えば、4月の全日本選抜体重別選手権で初優勝を遂げ、代表入りを果たしたことで注目を集めた60kg級の古賀玄暉がいる。バルセロナ五輪金メダルなどの活躍で知られ、3月24日に死去した古賀稔彦氏の次男である。
世界カデ選手権、世界ジュニア選手権など各年代の国際大会で優勝、将来を嘱望された古賀だったが、大学時代は伸び悩んだ感があった。2018、2019年の全日本選抜体重別選手権も出られずにいた。
講道館杯と兼ねて実施された2020年の全日本選抜体重別には出場したものの、通常の形式として初めて今春の選抜体重別に出場。しかし、大会の直前に「今までなら欠場も考えた」というほどの怪我を左膝に負っていた。
逃げずに前に出て掴んだ勝利
いざ大会では順調に勝ち上がり、決勝では合わせ技一本。見事、初優勝を手にした。
「通夜や告別式もあったんですけど、父に『試合に向けてやることをやれ』と言われている気がして、1日も欠かさずトレーニングしてここまでやってこられました」
何よりも勝因としてあげたのは、「気持ちがいちばん」。以前の試合であれば、逃げにまわる面があったという反省から、積極的に前に出続けた。それが実った大会だった。
豪快な背負い投げに象徴される父と柔道のスタイルは同じではないかもしれない。ただ、怪我をおして出場し、積極性を打ち出した姿勢は、徹底した負けず嫌いであった父の姿をほうふつとさせるものでもあった。
「目標はオリンピックでの金メダルなので、1つ1つ勝っていきたいです」
世界選手権の同階級には、東京五輪代表候補であった実力者、永山竜樹も出場する。永山もまた、これまでの出場でまだ届いていない世界選手権優勝という目標を胸に抱いている。
海外勢も手強く、頂点にたどり着くのは容易ではない。それでも古賀は、パリ五輪への一歩として、結果を残そうと決意する。
日本国外に目を向けると今大会を東京五輪代表選考の機会に設定しているところもある。その点で注目されるのが、女子57kg級だ。世界ランキング1、2位を占める2名を出場させるカナダは両者のうち成績が上位だった方を代表にするとしている。その候補の1人が世界ランク1位の出口クリスタである。2019年の世界選手権金メダリストであり、それ以前に、日本で活躍してきた選手だ。