オリンピックへの道BACK NUMBER
古賀稔彦次男・玄暉は初出場、出口クリスタはカナダ代表を目指して 五輪イヤーに異例開催の柔道世界選手権に強豪集結!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/06/06 06:00
今年の全日本体重別選手権を制し、初めて世界選手権に挑む古賀(左)。出口(右)はカナダ代表で東京五輪出場を目指す
高校時代からシニアの国際大会に出場するなど将来を担う1人と目されていたが、国内の主要大会を含め、なかなか優勝には手が届かずにいた。
転機は大学3年のとき。2016年11月の講道館杯で2回戦敗退を喫する。その敗北をきっかけに日本代表としての五輪出場ではなく、目標とするオリンピック出場の可能性がより広がる父の母国であるカナダ国籍を選択することを決めた。
そこから成長を遂げた。国際大会での成績が向上し、グランドスラム大会でも優勝。そして一昨年の世界選手権では金メダルを獲得した。
練習環境は、国籍を変えても変わらない。社会人になった今も、出身の山梨学院大学の道場を拠点とする。でも、成績では飛躍した。その理由を出口はこう語ったことがある。
「精神面が変わったと思います。試合前のメンタルや気持ちの作り方とか」
成長を促したカナダチームの環境
ナショナルチームのあり方が日本と大きく異なる点も大きかったかもしれない。思い思いに練習に取り組み、大会のいかなる結果にも肯定的な雰囲気がカナダにはあった。それが精神面に寄与した。日本代表の増地克之監督も、2019年世界選手権の際、「我慢できるようになって、気持ちで折れなくなったと思います」とその成長ぶりを評価している。
そして迎える今年の世界選手権。鍵を握るのは、順当なら準決勝であたる玉置桃かもしれない。玉置もまた、東京五輪を目指した有力選手の1人であり、だからこそ世界選手権のタイトルを奪取したいと考える。出口にとって容易ではない相手だ。
ある者は3年後の五輪を見据えて、ある者は今夏の祭典への切符を懸けて、それぞれ世界選手権にかける強い決意をもって試合に挑む。
オリンピックと同年というイレギュラーな開催の世界選手権だからこそ、さまざまな目標を持つ強者たちの思いが交錯する、この場限りの一戦が繰り広げられようとしている。