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池江璃花子を利用した五輪「中止派」と「推進派」の発信に思う…今の状況で“100%の準備”をする選手たちの苦しさ 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/05/13 11:02

池江璃花子を利用した五輪「中止派」と「推進派」の発信に思う…今の状況で“100%の準備”をする選手たちの苦しさ<Number Web> photograph by AFLO

21年の日本選手権に出場し、東京五輪への切符をつかんだ池江。五輪の辞退を要求する声が相次いだ

責任を問う相手は選手個人なのか

 その後、さまざまな反応が起こった。中心にあったのは選手個人へ向けて辞退を求めるコメントに対する是非で、色合いは異なっても、「非」の声が多数あがった。

 池江以外のオリンピック代表選手、あるいはオリンピック出場を目指している選手にも、同じような内容のメッセージが送られるケースはあるという。だが、オリンピック開催に反対する意見を向ける先が違うのではないか。

 開催を巡る状況は混沌としている。不透明だ。さまざまな問題にどう対処するのか、はっきりと見えてこない。具体的な、実行可能な策がそもそもないのかもしれない。開催可能とする数字や論拠も乏しい。理解してもらえるよう、説明する気持ちがないようですらある。そしてそれらの責任を問う相手は、組織委員会であったり、東京都であったり、国やIOCである。五輪開催への意見を向けるべきところを冷静に考える必要がある。

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 あらためて池江の言葉を読み返し、感じることがあった。

 そこには与えられた状況で最善を尽くす姿勢が感じ取れる。何が何でも開催してほしいと言っているのではなく、オリンピックが中止になることがあり得る状況であるのも理解し、その上で「やるならもちろん全力で」と記している。

 ここにアスリートとして置かれた状況の厳しさがある。

疑問を抱きながらの練習ではパフォーマンスは低下する

 本来なら、オリンピックから逆算し、そこでベストを尽くすためにどうトレーニングを積んでいくか、代表選考大会など途中にある試合も想定しつつ取り組む。

 その土台となるのは、メンタルにほかならない。まっすぐに目標へ向かって努力を積むには、自分の可能性を信じる心が欠かせないのだ。当然、目標となる舞台が存在していることがその前提になる。

 昨年、オリンピックは1年の開催延期が決まり、今年再び開催の先行きが不透明になっている現実がある。でもそこで「ほんとうに大会はあるのだろうか」と不安に駆られ、疑問を抱けば、練習に取り組む姿勢も変わってくる。大会を迎えたときのパフォーマンスは、何も不安なく取り組んでいたときと比べれば、きっと低下する。これはスポーツに限った話ではない。

 中止という結論が出ているわけではない以上、「ある」という前提に立ち、100%のトレーニングを積もうと努めなければならない。状況を考えれば、気持ちが揺さぶられるときは何度もあっただろう。それを抑え込み、日々励む苦しさは、並大抵のものではないはずだ。池江の言葉にあらためて、さまざまな選手の表情や言葉も浮かぶ。

【次ページ】 開催の是非の主張に利用される選手たち

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