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日韓戦ゴール後も川崎・山根視来が「らせん階段」的に進化… 2013年の中村憲剛と同じ「出力」の絶妙さとは
posted2021/04/24 17:02
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE
――成長とは、らせん階段を登るようなもの。
去年のことだ。「自身の成長をどう感じているのか」と尋ねた際に、山根視来が話してくれたこの話を、いまだによく覚えている。
彼は「昔、ある人に言われた話なんですが」と前置きした上で、成長をらせん階段に例えながら、こう話してくれたのだ。
「らせん階段を登る時って、上から見たらぐるぐると回って、同じところにいるように見えるかもしれないじゃないですか。でも、横から見たらしっかりと上に登っている。自分が成長していく中で、ダメになって元に戻ってしまったと思っても、実はレベルは上がって成長している。そういう話をしてもらったことがあって、これは自分の中で大事にしていますね」
なかなか景色が変わらないらせん階段を登るように、実感のないまま続いていく作業が日々の成長なのだろう。ただ、手応えが感じられなくても、実はしっかりと上に登っている。気づいた頃には、随分と高いところに着いているのかもしれない。この時の彼は、そんな思いを大切にしながらキャリアを積み重ねているのだろうな、と思った。
その年、川崎フロンターレは圧倒的な強さでリーグを制覇した。山根はJリーグベストイレブンに選ばれている。そして、今年は日本代表に初選出された。歩むステージは着実に上がり、見える景色も変わり始めている。
サンフレッチェ戦、山根が猛然と駆け上がった
――また山根視来だ!
等々力陸上競技場の記者席で、思わずそんな声を出しそうになった。
第10節の川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島戦のことである。
37分、相手の攻撃を中央で弾き返すと、セカンドボールを拾った遠野大弥はそこからカウンターに持ち込んで行こうとドリブルを開始。前線には三笘薫、レアンドロ・ダミアン、家長昭博が残っている。
自陣に戻る広島守備陣の人数は5人いたが、それでも川崎の選手たちは攻めを完結すべくボールを運んでいった。そしてパスを受けた左ウイングの三笘が周囲を見渡しながら仕掛けの時間を作っている間に、後方から猛然と駆け上がってきた選手がいる。
それが山根視来だった。