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33歳元Jリーガーが重量級プロボクサーに転身…野洲の衝撃、10年前の挫折、リベリアから亡命「やっと燃え尽きる場所が見つかった」
posted2021/04/28 17:02
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Shimei Kurita
「他のプロスポーツからの転身。イロモノで見られるのは分かっています。でもね、誰に何を言われようがもう気にしません。サッカーでは完全燃焼できなかったが、ボクシングでならできる。そんな気がしているんです」
元Jリーガーがプロボクサーへの転身――。
そんなニュースが一部スポーツ紙で報じられたのが、3月末のこと。ハウバート・ダン、33歳。久しく表舞台で聞くことがなかった男の名前は、筆者を含む30代半ばの高校サッカーファンには知られた存在でもあった。そんな男がいったいなぜ突如ボクサーを志したのか。所属する大橋ジムで取材に応じたダンは、自身の軌跡をなぞりながら、冒頭の言葉を何度も繰り返した。
ジョージ・ウェアに憧れて
リベリア人の父と日本人の母のもとに生まれ、ACミランで一時代を築いた“リベリアの怪人”ジョージ・ウェアに憧れてボールを蹴り始めた。
小さな頃から嫌なことは続かない性格だったという。ハーフで体も大きいダンはひときわ目立ち、学校生活では疎外感を感じることも少なくなかった。集団の和に入ることが苦痛で、人並みの悪さもしてきた。本人曰く、極度の飽き性。それでも、不思議とサッカーと向き合う時間だけは苦にならなかった。
山口県・多々良学園高(現・高川学園高)時代にその名は全国に知れ渡ることになる。恵まれた体躯に裏付けされた身体能力を活かし、2005年度の選手権ではエースストライカーとしてゴールを量産。青森山田高や流経大柏高ら名門校を次々と撃破し、同校として初のベスト4入りの原動力となった。
準決勝では乾貴士、青木孝太らを擁し、「セクシーフットボール」と称されて大会を席巻した野洲高に惜敗。それでも統率されたチームにあって、個人技で局面を打開するダンは優勝校の脅威となり、強烈なインパクトを残した。当時のことをこう懐かしむ。