酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平、今季は“リアル二刀流”でフル回転か 狙える数字を“皮算用”すると打者で35本塁打、投手で奪三振は…
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAP Photo/Mark J.Terrill/AFLO
posted2021/04/03 11:02
トミー・ジョン手術から復帰した2020年こそ成績は残らなかったものの、今季の大谷翔平からは大きな期待感が漂う
日本で投手として打席に立ったのは“14試合だけ”
高校野球などDH制の無い野球では投手は当然打席に立つ。「リアル二刀流」は当たり前の話だが、DH制のあるリーグでは投手が打席に立つことはほとんどない。
大谷翔平はNPBで85試合に登板したが、このうち打線に名を連ねて、打席に立ったのは14試合だけだ。
<NPB時代の年度別/投手としての打撃成績>
2013年 2試7打2安0本1点 率.286
2014年 3試7打1安0本0点 率.143
2015年 1試3打0安0本0点 率.000
2016年 7試21打8安1本4点 率.381
2017年 1試4打1安0本0点 率.250
通算では14試合42打数12安打1本塁打5打点、打率.286が、投手・大谷翔平の打撃成績だ。栗山英樹監督は大谷のコンディションが最高のときだけ、打席に立たせた。つまり「リアル二刀流」はあくまで限定的だったのだ。
しかしそれが可能な時の大谷は強かった。2016年は7月3日のソフトバンク戦で1番投手で先発し、いきなり先頭打者本塁打を打ったのが印象深いが、そのほかにも5月29日の楽天戦で猛打賞を打つなど、打者としても活躍。その結果として2016年のパ・リーグMVPに輝いた。
「リアル二刀流」が可能なコンディションであれば、大谷は投打で大活躍する可能性が高いのだ。また投手として打線に連なることで、DH制がないナショナル・リーグとのインターリーグ(交流戦)でも出場することできる。そうなればいろんな意味で可能性が広がることになる。
ちなみに投手で13勝、打者で11本塁打を記録した1918年のベーブ・ルースはDHの無い時代だから、当然ながらマウンドに上がった試合も打席に立った。そして20試合65打数23安打2本塁打13打点、打率.354というすごい記録を残している。
外野手・大谷翔平は実現するのか
「リアル二刀流」を採用する際に考えなければならないことがもう1つある。
それは「守備」だ。
もし先発として登板した大谷が打ち込まれて早々に降板して、以後も打者としては使いたいと思ったときにはどこかを守らせなければならない。ルールによってDHを外して打線を組んだ試合では、あとからDHを復活させることはできないからだ。
MLBでは投手以外の守備成績は残っていないが、NPB時代には、大谷は1年目に54試合、2年目に8試合外野を守っている。強肩を活かして7補殺を記録するなど、外野手としてもセンスを見せつけた。
栗山監督は当初は大谷を外野手と投手の二刀流で起用するつもりで、プロ初出場も「8番右翼」だった。しかし2年目の2014年7月13日のソフトバンク戦で左翼を守らせたのを最後に、守備には就かせていない。それはなぜか。