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「そんなに怒んなよ」「なんだよ!」“ダルの女房”で花開いた日本ハム鶴岡が説く「エース専属捕手の生き方」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byKYODO
posted2021/03/25 17:10
2010年7月に9勝目を挙げたダルビッシュとともにヒーローインタビューに答える鶴岡。相性抜群のバッテリーは、温厚で努力家である鶴岡の“内助の功”も大きかった
「ぼくは彼と組むことで、大事な試合に出場できるようになりました。ただ、相手がエースなので絶対に負けられない。このピッチャーと組ませてもらえなくなったら、プロ野球で生きていけない。そんなプレッシャーがありましたね」
そんな重圧との戦いを知ってか知らずか、チームメイトはダルビッシュに言いたいことを鶴岡に託すようになった。同僚からの“陳情”の対応、これもまた専属捕手の仕事。
「ダルビッシュ投手が偉大すぎるので、みんなぼくに言ってくる。“もうちょっとクイックしてくれ”とか、“少しはサインを見てくれ”とか、“首を振ってくれ”とか。ですからぼくが伝えるわけですが、ダルビッシュは“あ?”と。まあ、そんな反応ですが、ちゃんと話は聞いてくれるので嫌われたりしない。後輩で生意気だけど、全然気は遣ったりしませんでしたよ」
ダルビッシュ専属として信頼を得ることで鶴岡は主力に成長し、だれとでもバッテリーを組むようになる。だがキャッチャーは重労働。出番が増えれば、それはそれで大変になる。
「火水木と3連戦に出場して、移動日の金曜日の試合にたいていエースが出てくる。頭と身体が疲れていて、木曜日に負けたりしたら疲れも倍増。そんなときにエースと組む金曜日の試合は、相手も変わるので心と頭をさっとリフレッシュして臨むことが大事です。で、ダルビッシュ投手が完投すれば、中継ぎ陣は土日に連投しても月曜日に休める。エースがしっかり働くことで、チームがいい形でまわるわけです」
ダルビッシュという盤石のエースがいることで生まれる、勝利のサイクル。勝てるチームのメカニズムを熟知する鶴岡の経験は、先発陣の再編を迫られるファイターズにとって貴重な財産と言えるかもしれない。