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強すぎマンC、19連勝中! 戦術家ペップの新手は“偽SB”カンセロ・ロール…野球で言えば“攻撃的2番”的発想?
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/02/27 11:01
グアルディオラ監督が編み出したカンセロ・ロールでマンCは絶好調だ
デブライネばりのキラーパスを放つことも
ユベントスからやって来た昨シーズンはプレミアリーグのリズム、さらにはグアルディオラ監督のゲームプランに適応できなかった。しかし、1年間の学習を経た今シーズンは、左右両サイドで高度に順応し、ハイレベルな選手が揃うシティのなかでも異彩を放つ。
あるときはインサイドに絞って相手のMFを牽制し、またあるときはサイドのスペースに流れ、デブライネのようなキラーパスを配する。
その動きは“偽サイドバック”とか“カンセロ・ロール”と言われて、多くの戦術家を虜にしているが、やはりグアルディオラ監督は目の付け所が他の監督とは違う。
もともとがウイングとして育ったため、カンセロは狭いスペースでも前を向ける技術があり、キックの精度も高い。とはいえ、1対1の脆さや相手ボールになった際の怠慢など、守りの面で大きすぎる疑問符がついてきた。凡庸な監督ならSBでは起用しない。
ただ、グアルディオラ監督は常に常識を疑い、ポゼッション原理主義者ならではの発想で世間をあっといわせてきた。バルセロナとバイエルンでトライしたゼロトップにしろ、今回のカンセロ・ロールにしろ、数年前までのフットボール界では奇策でしかなかった。それでもグアルディオラ監督は固定概念を覆し、世界中から称賛を浴びているのだから、さすがというしかない。
そういえば長嶋監督も清水を2番に使っていた
かつて、読売ジャイアンツを率いた長嶋茂雄監督は、強打の清水隆行を2番に起用してプロ野球関係者の冷笑を浴びた。「2番はつなぎ」との概念を無視する人選だったからだという。ところが、現在は巨人の坂本勇人をはじめ、福岡ソフトバンクホークスの中村晃、東京ヤクルトスワローズの山田哲人らもこの打順で起用されることがあるなど、強打の2番も少なくない。
「きょうの非常識はあしたの常識」とでも言うべきか、
鬼が出るか、蛇が出るか。まだ今シーズンが終わったわけではない。それでも、直近のパフォーマンスを踏まえると、プレミアリーグで2位につけるユナイテッドがシティとの10ポイント差を覆す確率はかなり低い。
ヨーロッパ諸国の強豪は侮れないが、シティはチャンピオンズリーグでも優勝候補だ。決勝進出を決めているリーグカップ、ベスト8まで勝ち進んでいるFAカップを含め、四冠の可能性すら膨らんできた。
もちろん、グアルディオラ監督は「1つひとつ丁寧に」と周囲の期待をかわすだろうが、現在のシティには多くを期待せざるを得ない。さらに来シーズン以降どのようなプランで我々を驚かせ、楽しませてくれるのだろうか。
「ゼロトップ」「カンセロ・ロール」に次ぐようなアイデアを、すでに思いついているのかもしれない。