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新生リカルド浦和、“白紙からの定位置争い”が新鮮 キャンプで見えた独自性と激戦区は…【開幕予想布陣つき】
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byURAWA REDS
posted2021/02/10 06:00
リカルド・ロドリゲス監督は大きく陣容が変わった浦和のメンバーをどのようにして起用していくか、注目したいポイントだ
札幌戦2日前のトレーニングでは、自陣からのビルドアップのパターンを入念に確認していた。ボールの動かし方や選手のポジショニング、スペースの作り方はきわめてロジカルで、選手が理解を深めていく様子も見てとれた。
だが、当然ながら実戦で自在に行なえるレベルには達しておらず、その現実を突きつけられたのが、札幌戦だったというわけだ。
苦し紛れの横パスで“詰んだ”状態をどう避けるか
さらに、個人技術(パス精度とトラップ、ターンの技術)と共通認識の問題もある。
左センターバック(CB)から右CBにボールが渡ったとき、右サイドハーフがインサイドに落ちてボールを受けようとする。その2m以内に敵がいた場合、ボールを保持する右CBは縦パスをためらい、苦し紛れに右SBに横パスを出す。だが、そのパスは完全に読まれていて、ジ・エンド。相手に囲まれ、“詰んだ”状態にされてしまう。
例えば、これが川崎フロンターレなら、“相手が2mも離れていればフリーだ”とチーム全員が認識しているから、パスが出てくる。むろん、出し手にはパスを通す精度があり、受け手にもピタッとトラップして前を向く能力がある。こうした共通理解と技術が浦和の場合、まだ足りていない。
しかし、それも時間を経るごとに解決されていく問題だろう。現時点でも成長の跡が見えるし、「映像を用いて、こうした動きでこういうところが空いていた、といった細かい話をピッチ外で伝えている」と指揮官も語っているからだ。この辺りの確認やすり合わせは、おそらく地元に戻ってから入念に行なわれるに違いない。
各ポジションの序列は白紙、ミドルゾーンが激戦区
一方、各ポジションの序列はいったん白紙に戻され、激しくも、新鮮なポジション争いが繰り広げられている。
とりわけ激戦区なのが、ミドルゾーンだ。
ワイドのポジションでは、ドリブラータイプの関根貴大、汰木康也、田中達也、大卒ルーキーの大久保智明の4人に加え、右サイドハーフは4-4-2から3-4-2-1に変化した際、右シャドーとなるため、武田英寿や小泉佳穂、明本考浩といったプレーメーカー、アタッカータイプも起用されている。
ボランチは、対人に強い柴戸海、オールラウンダーの阿部勇樹、伊藤敦樹、金子大毅、プレーメーカーの柏木陽介、小泉、武田がいるうえに、サイドバックが本職の西大伍や山中も務めることがあるほどだ。