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なぜ田澤純一は“下位指名”すらされなかった? 日ハムスカウトの証言「新人選択会議という名称ですから…」
posted2021/01/29 17:03
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
日本の野球界はまたあの男の“海外行き”を見送る立場になった。
メジャーで似たような境遇にありながら昨季日本野球界への復帰を果たし、今季は新たに阪神との契約を交わした台湾人左腕、チェン・ウェインの報道を見るにつけ、なんとか出来なかったのかと無念でならない。
あの男とは田澤純一のことである。チェンと同じくメジャーの第一線で活躍。レッドソックス在籍時の2013年にはワールドチャンピオンにも輝いた田澤は日本球界への復帰が叶わず、今季から台湾のプロ野球界に身を投じる。
34歳の田澤が“新人扱い”
田澤の去就は2020年の注目の一つだった。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、3月のスプリングトレーニング中に、シンシナティ・レッズから解雇を言い渡され日本へ帰国。NPB入りを目指して独立リーグの埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーした。
日本のプロを経ずメジャーに渡った田澤には、復帰制限措置(2年)、いわゆる“田澤ルール”が適用されるため、レッドソックス時代のチームメイト・上原浩治らがメディアを通して異議を申し立てるなど話題となった。
それらがNPBに通ったのか、9月にはこのルールは撤廃。そこまではよかったのだが、次なるルールが田澤にのしかかった。アメリカで12年間のプロ経験がある田澤でも、NPBに入団するためにはドラフトにかけないといけないというものだった。
34歳の田澤が新人扱いとされる。
これは、彼の力量云々ではなく、それ以上に大きな問題を投げかけていた。
ドラフト制度というのはそもそもチームの5年後、10年後を担う素材を拾い上げるものだ。将来のチームビジョンを描き、その中に組み込む選手を選ぶのがドラフトであるはずなのだが、現行のルールでは田澤は「新人」に相当するのだ。
日ハムスカウト部長「体力は落ちているけど…」
野球協約は「新人」をこう明記している。