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なぜ田澤純一は“下位指名”すらされなかった? 日ハムスカウトの証言「新人選択会議という名称ですから…」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/29 17:03
昨季のBCリーグで登板する田澤純一。ドラフト会議では指名されず、台湾球界入りする
<新人選手とは、日本の中学校、高等学校、日本高等学校野球連盟加盟に関する規定で加盟が認められている学校、大学、全日本大学野球連盟の理事会において加盟が認められた団体に在学し、又は在学した経験を持ち、いまだいずれの日本の球団とも選手契約を締結したことのない選手をいう。日本の中学校、高等学校、大学に在学した経験を持たない場合であっても、日本国籍を有するものは新人選手とする。>
<球団が新人選手と選手契約を締結するためには選択会議で(一部略)、契約を希望する選手に対する選手契約締結の交渉権を獲得しなければならない。>
「34歳の新人」と「ドラフト制度の主たる目的」――。
その狭間で12球団の編成部の多くは難しい決断を下さなければならなかった。
そして、その結果は田澤にはあまりにも残酷なもので、まさかの指名漏れだった。
田澤と同じクローザー候補がFA市場にいたことが影響したかもしれないし、下位指名だと失礼に当たると思ったのかもしれない。理由はいろいろ考えられたが、ドラフト前から指名候補に入れている球団はあったものの、結局、手をあげるチームはなかったのである。
ただ、これは田澤本人への評価ではないだろう。つまり、彼の実力がNPBでは通用するものではないと判断されての決定ではない。「体力は落ちているけど、テクニックは上がっている。評価するチームもそうでないチームも両面いたと思いますよ」とは日本ハムのスカウト部長・大渕隆だ。いわば、2020年のドラフトでの指名漏れは、34歳の選手をドラフトで指名するのはリスクが高いと判断したものと言っていいのではないか。
そもそも13年前、なぜアメリカを選んだのか?
問題は、この結果を受けて、台湾に渡った田澤をこのまま日本球界外の人物としてしまっていいのだろうか、ということだ。もし、この大渕スカウトの言っていることが事実なのだとしたら、それだけの能力のある人材を日本球界に残さないというのは損失が大きすぎる。
田澤には12年の海外経験がある。
たとえ、彼がNPBで結果を残せなかったとしても、取り組む姿勢や練習方法などはチームに還元できる部分はあるだろう。コーチではないから指示を仰ぐとはいかないまでも、彼の意見を聞くことで日本野球界への大きな財産になる。
そもそも田澤がNPBを経ずにメジャーに渡ったのは日本球団へのアレルギーからではない。