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「ジャンプの成功と失敗にどんな違いがあるのか?」羽生結弦が早稲田大学で書いた“3万字卒論”の中身
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/04/15 17:02
小学生時代からジャンプの成功、失敗時の要因をノートに記して、分析してきた羽生。近年はタブレットなどを用いて、動作の把握に努めている
「3つのパートは、それぞれが1本の卒業論文として成立するレベルにありました。分量も計3万字ほどで、平均的な論文の倍以上です。ここが分かったから次、とより深く追求したいという羽生さんの姿勢がその構成と内容からうかがえます」
右足首外側の靱帯損傷のケガをした2017年、羽生は自分の身体について知るため文献を読み漁っていた。頂点に立っても、飽くなき探究心を持つその姿勢が本論文に結実したと言える。
「伝え方が優れていて、指導者としても素質を感じます」
西村教授は最後にこうメッセージを送る。
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「研究者としても一流になれると感じますし、羽生さんの研究テーマは新しい分野ですから、ぜひ牽引していってほしいですね。
伝え方が優れていて、指導者としても素質を感じます。研究、指導どちらの面でも今後を期待しています。というのも、私の専門の1つに『遠隔教育』があります。文字化できる内容を教えるのは問題なくても、身体の動きや技などをどう指導するかについてはまだ課題が残っています。
それらをどうやれば教えることができるか、私も直面している壁を彼なら超えてくれるんじゃないかと思うのです」
西村昭治
1960年8月16日、東京都生まれ。'83年早大理工学部卒。教育工学を研究し、'03年日本初のネット学習のみで卒業可能な教育課程(eスクール)を立ち上げる。'06年から人間科学部教授。