競馬PRESSBACK NUMBER
結局、“左回り”は苦手だった? サートゥルナーリア引退で母シーザリオからの物語は子どもたちへ
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/01/18 11:01
19年皐月賞を制したサートゥルナーリア。母・シーザリオから継いだ確かな血を、次の世代へ渡していく
それでもやはりサートゥルナーリアは非凡な馬だった
だからといってこのシーザリオの仔が実は平凡な馬だったかと言うと、決してそうではないだろう。GI2勝を含むデビューからの4戦を全て勝てる馬などそうそういない。そんな能力を再び示したのが秋初戦の神戸新聞杯(GII)だった。この2400メートル戦で、ダービーでは先着を許したヴェロックスに3馬身差、直後に菊花賞を制するワールドプレミアには4と4分の1馬身の差をつけて楽々先頭でゴールに飛び込んだ。
この勝利で再び評価を取り戻したサートゥルナーリアは、続く天皇賞(秋)ではアーモンドアイに次ぐ2番人気の支持を受けた。しかし、結果は人気に応えて優勝したアーモンドアイとは対照的に6着。初めての古馬相手のレースで、自身初めて、そして結果的に最初で最後となる掲示板を外す結果となってしまった。当時、角居調教師は敗因の1つに左回りをあげていた。
「負けた2回はいずれも東京競馬場での1戦。実際、左回りだと手前を替えるのが右回りに比べてスムーズではありません」
この言葉を証明するように右回りに戻った有馬記念(GI)ではリスグラシューの2着と善戦した。
こうして出走したのが昨年春の金鯱賞(GII)だった。舞台は中京競馬場の2000メートル。鬼門となる左回りである。
しかし、他にGIホースがいないという手薄なメンバー構成だった事もあるが、サートゥルナーリアはここを圧勝してみせる。2着サトノソルタスにつけた差は2馬身だったが、全く危な気のない着差以上の楽勝を披露してみせたのだ。
宝塚記念(GI)ではまたも1番人気に推されたが、ここは稍重という発表以上に重くなった感のある馬場の巧拙の差も出たか、勝利したクロノジェネシスから大きく離された4着に敗れた。
角居調教師はこの2月に厩舎をたたむけれど
その後は秋のGI戦線で復帰を予定していたが、その直前に左後肢の飛節を痛めると、更に左背中の筋肉の落ち方も顕著になったとの事で、このたび引退が発表された。
角居調教師は自らの都合でこの2月に厩舎をたたむ。定年を待たずして引退する伯楽に、最後の大仕事をしてくれる可能性のある馬かと思えただけに、昨秋以来復帰出来ないままターフを去るのは寂しいばかりである。今後は社台スタリオンステーションで種牡馬になるとの事。角居調教師がその産駒の面倒を見る事はできないが、しっかりとした牝系の裏付けがある血統だから、子ども達の活躍には期待したい。