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結局、“左回り”は苦手だった? サートゥルナーリア引退で母シーザリオからの物語は子どもたちへ
posted2021/01/18 11:01
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
15日、サートゥルナーリア(牡5歳、栗東・角居勝彦厩舎)の引退が所属するキャロットクラブのホームページで発表された。
物語は十数年前まで遡る。2004年、角居厩舎の忘年会に呼ばれた福永祐一騎手。この年、厩舎に大きく貢献出来たわけでもないのに招待をいただいた事から、挨拶の際に言った。
「来年はもっと角居厩舎の力になれるように頑張ります」
この言葉を受けて、角居調教師は返した。
「こちらこそ祐一君に貢献出来ずに申し訳なかった」
この直後、角居厩舎から依頼を受け、福永騎手がコンビを組んだのが父スペシャルウィーク、母キロフプリミエールの牝馬、シーザリオだった。
福永祐一とともに樫の女王となったシーザリオ
2004年のクリスマスにデビュー勝ちしたシーザリオは年の明けた2005年、寒竹賞、フラワーC(GIII)と連勝。3連勝でクラシックに乗った。
しかし、牝馬クラシック3冠の第一関門である桜花賞(GI)で、福永騎手は同馬の手綱を取る事が出来なかった。先に依頼のあったラインクラフトに乗るためだ。結果は好スタートから先行したラインクラフトが早目先頭から粘り込んで優勝。公営のジョッキーに乗り替わったシーザリオは後方から追い上げるも馬群を捌き切れずアタマ差の2着に惜敗した。
桜の女王となったラインクラフトはこの後マイル路線を選択し、NHKマイルC(GI)で優勝する。これに対しシーザリオはオークス(GI)へ。進む路線が分かれた事でその鞍上に再び福永騎手が戻ると、見事にシーザリオは樫の女王の座を手中にした。そして更に続く1戦ではアメリカへ飛び、アメリカンオークス(GI)に出走。結果ここも圧勝し、日本調教馬として初めてアメリカのGI制覇を成し遂げてみせた。後にヴィクトワールピサでのドバイWCやデルタブルースでのメルボルンCなど、世界中で数々の大レースを優勝する角居調教師だが、このシーザリオでのアメリカンオークスがその第一歩。最初に制した海の向こうのGIレースだった。
アメリカの関係者の前に初めて登場し、目の覚めるようなパフォーマンスを披露した事で北米のエクリプス賞(日本のJRA賞に該当)でも候補にノミネートされる事になったシーザリオだが、残念ながら繋靭帯炎を発症。この一戦を最後に引退に追い込まれた。