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春高バレー伝統校から“坊主”が消えた? 初戦屈指の好カード、崇徳vs.星城のもう1つの楽しみ 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/01/04 06:01

春高バレー伝統校から“坊主”が消えた? 初戦屈指の好カード、崇徳vs.星城のもう1つの楽しみ<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

紺のユニフォームに坊主頭の印象が強い広島・崇徳高校(写真は2018年1月撮影)

 そんな変化を求めていた崇徳に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルス感染症拡大の影響だ。

 代々メンバーが変わってもコンビバレーに重きを置く崇徳は、チームとしてどんなスタイルを目指すか、自分たちの長所は何か、それを活かすための攻撃パターンはどう組み立てるべきか、など本多監督からの指示に基づいて課題解決に取り組んできた。しかし、日々の練習や春高をゴールに仕立てた年間スケジュールも変更を余儀なくされたことで、これまでは当たり前だった全体練習や練習試合、さらにはインターハイや国体といった公式戦も軒並み中止に。それぞれが自身でできることに取り組まなければならない時間が増えた。

 どちらかと言えば与えられることに慣れていた選手たちも、当たり前の概念が崩れた今は、それぞれが必要だと思う練習に積極的にチャレンジする姿が見られた。

「ブレーキをかけることが仕事だった」

 しかし、その「自主性」が思わぬ弊害を招いた。

 全体練習が再開され始めた6、7月頃からは、それぞれが自身と周囲を比較したことで「もっとジャンプできるはず」「自分の攻撃はこの程度じゃない」と、過度に練習しようとする選手が続出。本多監督は「ブレーキをかけることが仕事だった」と振り返る。

「基礎体力と技術を磨く時間が圧倒的に足りないから、自分のイメージと実際のプレーが違うと『もっとやらなきゃ』と無理をして追い込む。自粛期間を終えてから高校生にケガが相次いだのは練習をさせすぎだという報道もありましたが、逆なんです。焦って、やりすぎる選手をどう止めるか。自主性を重んじながらも、指導者が『これ以上はダメ』とコントロールする。だから選手からすれば、試合もできないし練習も十分できない。ずっと、飢えていたと思います」

 坊主頭の禁止などチームに新しい変化を取り入れ、自主性を重んじる難しさをも乗り越えながらチームを作ってきた“新しい崇徳”。公式戦の舞台に飢えに飢えてきた分、無観客ながら開催が決まった集大成である春高では1つでも多く試合を経験させてあげたい。そう願う本多監督だったが、初戦の相手が決まる「神様のいたずらとしか思えない」と思わず苦笑いをする。いきなり、“因縁”とも言うべき相手と戦うことになった。

【次ページ】 U18日本代表では監督とコーチの関係

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