バレーボールPRESSBACK NUMBER

春高バレー伝統校から“坊主”が消えた? 初戦屈指の好カード、崇徳vs.星城のもう1つの楽しみ 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2021/01/04 06:01

春高バレー伝統校から“坊主”が消えた? 初戦屈指の好カード、崇徳vs.星城のもう1つの楽しみ<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

紺のユニフォームに坊主頭の印象が強い広島・崇徳高校(写真は2018年1月撮影)

 5日、崇徳が初戦で対戦するのは、激戦区・愛知県を制し4年ぶりの春高出場を果たす星城だ。

 黄色のユニフォームを纏う星城は、前述のようにいわゆる出で立ちから伝統校のイメージが強い崇徳とは異なり、「自由」に重きを置いてきたチームである。竹内裕幸監督が就任当初から「強豪校の足元をすくうには、同じことをしても勝てないと思ったので、真逆の華やかさに目を向けた」と言うように、練習着の色は揃えず、セレクトは選手任せ。もちろん、髪型も坊主頭が揃うわけではない。歴史もチームの雰囲気も180度異なる。

U18日本代表では監督とコーチの関係

 そんな対照的な両校の対決を引き立てるのは、両指揮官の関係性も大きい。U18日本代表で監督を務めるのが本多監督で、そのコーチを勤めるのが竹内監督。つまり、風土の違うチームを率いながらも2人は世界を舞台に未来の日本代表を担う選手を率いて共に戦う同志なのだ。竹内監督も本多監督と同じように苦笑いを浮かべる。

「うちは久しぶりの春高出場。(春高に)出られない間の苦悩を相談したり、アドバイスをもらっていたのが本多先生でした。海外、国内共にこの数年一緒にいる時間が長く、たくさん勉強させてもらった本多先生と、春高で対戦すること自体が初めて。ほとんど会えなかったこの1年の最後の最後、こんなに濃いところで交わるか、とびっくりしました」

 組み合わせが決まるまでは「来年の(U18代表候補の)選考をどうするか」と共に頭を悩ませてきたが、日本一を目指す高校での戦いを控え、次はライバルとしてしのぎを削る。互いに電話で「どんな対策を練っているかと聞き合えるぐらい、変わらず密なコミュニケーションが取れている」と竹内監督は笑うが、星城も課題を抱えながらチーム作りを重ねてきた。

星城が失った「共有の時間」

「うちはもともと自主性を重んじてきたので、個々の体力や技術に関しては全体練習が始まってからもさほど苦労しませんでした。ただ、それぞれが前向きに取り組んではいても個と個がチームとして結びつかない。1年生は体力もないし、春高のような大きな大会へどう向かって行けばいいかわからない。一方で3年生は最後だし練習をもっとやりたい。自分の意思だけでなく、チームとして今はどういう時期かを共有しなければならないのですが、コミュニケーションを図る時間が少なかったせいか、それぞれの小さな違いや差をすり合わせるのが、ものすごく大変でした」
 
 大まかな練習メニューは竹内監督が提示するとはいえ、基本は選手で考え実践するのが星城の特徴。以前、同校OBでもある石川祐希は「サボろうと思えばサボれるかもしれないけれど、そこでいかに個々が高い意識で取り組めるか。その差が結果につながると教えられたのが高校時代だった」と振り返っていたことがあるように、自分を追い込めるか楽をするかは個人次第。これまでならば、互いが「個」の課題を指摘し合い、何が足りないかを突き付け合って練習で克服し、少しずつチームとしての形を磨いてきた。しかし、自粛期間が長く続いた今年はそれができない。個々の力をどうチームとして機能させるのかに苦しんだ。

 竹内監督が「どういう戦い方をするか、という以前に万全のコンディションで東京(春高)に行くことが一番の目標」と言うように、大会直前まで試行錯誤を続けながらチームのコミュニケーション強化を重点に調整を続けている。

BACK 1 2 3 4 NEXT
崇徳高校
星城高校

バレーボールの前後の記事

ページトップ