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渋野日向子の戦いを米ベテラン記者はどう見た?「ナーバスになっていたと言っていたが…」
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byGetty Images
posted2020/12/15 18:00
全米女子オープンで優勝争いを演じた渋野日向子。史上初のメジャー2勝目とならなかったが、確かな成長を見せた大会でもあった
「努力」が結果に直結した
米ツアー参戦を目指す渋野も、海外勢と対等に戦うためにはショートゲームの重要性をより痛感していた。約2カ月間に及ぶ今夏の海外遠征では、試合中の実践、練習場での復習と、ひたすらに繰り返した。
そんな日々の努力が、今週の結果に直結した。
3日目を終えた時点で後続に1打差をつけた単独首位。「奇跡的にまだ一番上にいる」と“しぶこ節”で謙遜したが、今大会の渋野はショートゲームが冴えていた。バンカーやラフから正確なショットを放ち、3日間のパーオン率は74%(2位)。
「(ショットを打つ前に)イメージして、どこに落として打つか考えるようになってから、今までより良くなってきてるのかなと思います」
また2日目の試合後には、メンタル面の変化も好調の要因として口にした。
「うーん……今までの自分を捨てたことかな」
新しいことを試す過程で、望むような結果が出ず、活躍していた昨年の自分に戻りたいという時期もあった。
昨年の『AIG女子オープン』は雨も降らず、ほぼ無風。同コースの地面は柔らかく、ボールは止まりやすかった。好条件に恵まれたことで渋野は果敢にピンを攻め続けた。
だが、それを過去の栄光と割り切って、愚直に邁進し始めたことが功を奏した。“耐えるゴルフ、粘るゴルフ”で試合をリードしていった。
3日目まで最もコースに順応したのは渋野
もちろん、渋野だけではなく、米ツアーで活躍する選手はさまざまな芝や環境で戦う術を身につけている。世界ランク10位以内の4選手は2週間前に事前にコースを回ったりと、各自しっかりと調整をこなしてメジャーに挑んでいる。
優勝できるのはたった1人だけ。直近のメジャー13試合のうち、12名の異なる勝者がいる。栄冠を掴むには、実力を大前提として、それ以外の“何か”も必要だった。
数年前の記者会見で、海外メジャー通算7勝の朴仁妃(韓国)が勝利の秘訣を語っていたことを思い出した。
「米ツアーは年間通して、アメリカ国内外へ転戦します。毎週のように試合会場が変わるため、その週のコースに“いち早く順応した選手”が勝つんです」
朴の言葉を借りれば、3日目終了までは渋野が最もコースに順応した選手だったということだ。だが、大会は4日間である。悪天候のためサスペンテッドになった月曜日に決着がついた。