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サイ・ヤング賞逃すもダルビッシュの歴史的快投 MLB史上1位の記録、涌井秀章との“最多勝の縁”とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byAP/AFLO
posted2020/11/12 11:04
今季のダルビッシュは投げれば確実に抑える印象があった。日本人初のサイ・ヤング賞受賞ならずとも、その雄姿は誇らしかったのだ
重要視される指標でも投手2位
サイ・ヤング賞は記者投票だが、大部分の記者が最も重要視するのがWAR(Wins Above Replacement)だ。WARは投球、打撃、守備のあらゆる指標を組み合わせた総合的な指標。米記録サイトのBaseball ReferenceによればデグロムのWARは2019年は投手1位(7.6)、2018年は2位(9.9)だった。
今季のWARを見ると、29日のダルビッシュ登板前時点で、ブレーブスのフリード(5勝0敗)がWAR2.5でナの投手1位、ダルビッシュは2.1で2位につけている。
ダルビッシュは2013年にアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞投票で当時タイガースのマックス・シャーザーに次ぐ2位になったことがあるが、これが日本人の最高位(この時の3位はマリナーズの岩隈久志)。サイ・ヤング賞を獲得すれば、日本人投手初の快挙となるかと期待された。
返す返すも残念な60試合制
しかし残念なのは、今季が60試合しかなかったこと。
シカゴ・カブスは33試合を消化している。現時点で7試合6勝1敗43.0回、52奪三振のダルビッシュがこのペースを保っていれば、最終成績は、13試合11勝2敗78.0回、95奪三振程度に収まりそうだった。
相対的に見て抜群の成績なのだが、例年通りの162試合制なら……34試合29勝5敗211.0回255奪三振というすごい成績になっていたことになる。
だからこそ、MLB史上異例のショートシーズンが本当に恨めしい限りだ。
ダルビッシュは昨年の後半から覚醒したかのように投球のレベルが上がった。
このコラムでも紹介したが、後半戦だけならダルビッシュは9イニング当たりの奪三振数(K9)とK/BBでナ・リーグ1位、MLBで3位になっている。
その好調ぶりを今年も、新型コロナ禍による自粛期間を経ても維持し続けたのだ。彼の精進ぶりがうかがえるというものだ。
それだけではない。ダルビッシュはすでに歴史的な投手になっている。