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怪物・井上尚弥、“豪傑・パッキャオ”の域を目指し、次戦はWBO王者カシメロ? それとも… 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byGetty Images

posted2020/11/09 17:03

怪物・井上尚弥、“豪傑・パッキャオ”の域を目指し、次戦はWBO王者カシメロ? それとも…<Number Web> photograph by Getty Images

王者・井上尚弥(大橋)はジェイソン・マロニー(オーストラリア)に7回KO勝ちと、完璧な勝利を飾った

「1年に3戦で、アメリカで2戦、日本で1戦というペースを希望しています。日本、アメリカで交互に戦ってくれれば素晴らしいと思います」 

 マロニー戦開始前、トップランクのモレッティ副社長はそんなふうに井上の青写真を描き出していた。すべてはパンデミック次第だが、プラン通りに2021年に3戦消化できたとして、ダスマリナス、カシメロ、ウバーリ(かドネア)に3連勝するのが理想の流れと言える。リングマガジンのパウンド・フォー・パウンド・ランキングでは現在2位だが、来年の終わりには1位浮上も有望。その時点で井上は軽量級のレジェンドになり、アメリカでもおなじみの存在になるはずだ。

“豪傑・パッキャオ”に近づくために「すべきこと」

 ただ……ベガスデビューを期待通り、いや、期待以上の形で終え、日本のモンスターに対する期待感は一層膨らみ始めている。そのキャリアの比較対象となるのは、マロニー戦のファイトウィークを通じて現地でも盛んに引き合いに出されていたマニー・パッキャオ(フィリピン)である。

 現実的に井上がパッキャオの域まで達することは本当に可能なのかと問われれば、容易ではないと言わざるを得ない。比国の怪物はなんと8階級にわたって活躍し、6階級で主要タイトルを獲得。フロイド・メイウェザー(アメリカ)戦では実に100億円以上のファイトマネーを受け取ったパッキャオのような豪傑は、おそらくもう2度と現れることはない。比較対象にすること自体、途方もないことのように思える。 

 とはいえ、アメリカに打って出る海外選手がその成功モデルを参考、励みにし、プロモーターも宣伝材料の1つにするのは正しい方向性だ。特にアジアの島国出身で、軽量級のパンチャーであることなど、実際にパッキャオと井上の間に共通点は少なくない。

「パッキャオなんてまだまだ手の届く存在じゃないので、これからどんどんそういう位置に近づけるようになりたいですね」

 井上本人もそう語っていた通り、今後はパッキャオの成功に少しでも迫っていくことが目標の1つになるのだろう。そのために今後、井上がやるべきことは、まずはこれまで通りに印象的な形で勝ち続けること。そして、周辺の階級にライバルを見つけること。この2つ目は井上だけではできず、端的に言って、トップランクとの契約はその部分での助けを得るためだったと言っても大袈裟ではあるまい。

【次ページ】 昇級しても超越的な強さを保てるか

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