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怪物・井上尚弥、“豪傑・パッキャオ”の域を目指し、次戦はWBO王者カシメロ? それとも…
posted2020/11/09 17:03
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
「私の想像以上だった。良い選手だとわかっていたが、実際に見ないとわからないもので、これほどとは思わなかった。とてつもない選手だよ」
トップランクのボブ・アラム・プロモーターが残したそんな言葉が、井上尚弥(大橋)のラスベガスデビューのインパクトを物語っている。
10月31日、MGMグランドガーデン内にあるカンファレンスセンターで行われたWBAスーパー、IBF世界バンタム級タイトル戦で、王者・井上尚弥はジェイソン・マロニー(オーストラリア)に7回KO勝ち。序盤から主導権を掌握した上で、6、7回に鮮やかなカウンターでダウンを奪うという完璧な勝利だった。
次の対戦相手は誰なのか?
これまでKO負けが一度もなかった挑戦者を戦闘不能にしたフィニッシュの右のインパクトは特に大きく、そのシーンはソーシャルメディアでも拡散。これまでアメリカでもマニア間の評価こそ抜群に高かったものの、一般的には“知られざる強者”だった井上の知名度もここで一気に上がったようだ。
ハロウィンの夜に催された怪物のお披露目パーティーはこうして見事に大成功。今後、井上がリングに立つたびに、アメリカでもこれまでに以上に多くの視線が集まることは間違いない。そうなってくると、対戦者選びもより重要になってくる。
「この状況ですし、またいつできるか、どんな相手とできるか分からない。WBCとWBOにチャンピオンがいるのでそのどちらかとやりたいし、IBFの指名試合も選択肢の一つに入ってきている。そこは状況に応じてですね」
試合後、MGMで取材した3人の日本メディアから今後について問われ、井上はそう答えていた。その言葉からは、パンデミックで様々な制約がある中で、より重要な試合だけをやっていきたいという意思が透けて見える。