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怪物・井上尚弥、“豪傑・パッキャオ”の域を目指し、次戦はWBO王者カシメロ? それとも…
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/11/09 17:03
王者・井上尚弥(大橋)はジェイソン・マロニー(オーストラリア)に7回KO勝ちと、完璧な勝利を飾った
一部では「カシメロが割安報酬を拒否した」と喧伝されたが、トップランクのカール・モレッティ副社長のこんな証言を聞く限り、その話は真実ではなかったようだ。
「4月の試合が流れたあと、カシメロに試合オファーは出していません。カシメロが当初の約50%の金額では戦わないことはわかっていたからです。受けるはずのないオファーは出す必要はないと考え、それで井上対マロニー戦を行う経緯となりました。井上対カシメロのような試合は観客を入れて行うべきだということです」
ともあれ、軽量級でも統一戦はよりコストがかかるだけに、今後もその部分がネックになりかねない。
夏の時点では「井上対カシメロはゲート収入に依存した興行ではない」と話していたカシメロ側のショーン・ギボンズ・プロモーターも、最近では「やはりファンの見ている前でやるべき試合」と考えを変えている。だとすれば、WBCにしろ、WBOにしろ、統一戦は少し先送りになる可能性が高いのかもしれない。
最有力候補は《マイケル・ダスマリナス》か?
となると、井上の次の相手の最有力候補はIBF指名挑戦者マイケル・ダスマリナス(フィリピン)か。
IBFはもともと他の世界タイトル統括団体と比べてルールが厳格。同団体の王者が指名戦期限を過ぎた場合、本来は統一戦以外の防衛戦を認めていない。井上の場合、指名戦期限は3月だったが、パンデミック下であることも考慮され、トップランクが2万ドルの待ち料を払った上で10月のマロニーとの防衛戦が認められた経緯がある。まだパンデミック中とはいえ、このような特例が今後も通るかどうかは微妙なところだろう。
ここまでの流れと同じように、井上がIBFの王座保持にこだわるならば、次戦は統一戦かIBF指名戦の二択になる。ダスマリナス、カシメロの両方を契約選手として抱えるギボンズ・プロモーターも、まずはIBF指名挑戦者にチャンスを与えたい意向を示していた。井上の方としても、いずれ戦わなければいけないダスマリナスとここで拳を交えておくのも悪くないのではないか。特に次戦の開催地が報道通りに日本だとすれば、まずは“凱旋防衛戦”のような形で指名戦をこなし、IBFルールから自由になった上で再びベガスでの統一戦に目を向けるのもいいだろう。