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来秋ドラフト目玉の“最新型ピッチャー”とは? 令和の高校生は「緩急で投げない」「球速にこだわらない」 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2020/11/05 17:02

来秋ドラフト目玉の“最新型ピッチャー”とは? 令和の高校生は「緩急で投げない」「球速にこだわらない」<Number Web> photograph by KYODO

甲子園、この夏の高校野球交流試合の広島新庄戦で、力投する天理の193cm右腕・達孝太(2年)

「押し込めるストレートがなかったのがこれからの課題になりました。ストレートだとわかっていても打てないようなストレートを投げられるようにならないと抑えられないなと思いました。変化球に関してはストレートが良くなれば、キレも増すと考えています」

 理想とするのは単純な球速ではなく「打者の手元でこそ強いボール」だと達はいう。つまり、球速をある程度にしたまま、回転のいいストレートを投げることを目指している。どういう風に上げていくかのイメージも彼の中にはある。

「シャーザーがそうなのだと思いますが、いかにリリースする時の指先に力を加えられるか、だと思います。それをするためには、下半身をしっかり使えるような投球フォームでなくてはいけないと思う。この冬、しっかり下半身を鍛えたいですね」

「YouTubeで1日のハイライト動画は観られるので……」

 近畿を代表する二人の投手を取材していて感じたのは、最近の高校生は自ら情報を収集して、自分のピッチングの成長へとつなげようとしていることだ。世の中の投手がどうしていいのかを自分たちの中で分析して、それを実際に取り入れていく。社会のテクノロジー化に合わせて、野球界も変化しつつあるが、高校生たちもそこへ向かい始めている。

 ここ数年で野球界にはテクノロジーの波がおとずれている。トラックマン(球速や打球の角度を測定する機器)の導入もその一つだが、育成年代のトレーニングにおいても、ピッチングや体の動きを可視化して、個々にあったトレーニングが取り入れられるようになった。

 達がたびたび口にした「回転数」はその数値だけが良いかだけではなく、軸がどの方向に向いて回転しているのかも分析する必要があり、そうした会社、あるいは、トレーナーが今の野球界に大きな貢献をするような時代になっている。

 おそらく、小園や達のようなアンテナの張り巡らせ方をしていると、彼らのキャリアの早いうちに、そうしたトレーナーやデータ分析会社の人間たちと出会う機会に恵まれるだろう。

 高校野球は寮生活などで事細かに生徒たちを管理する学校もある。ある報道では「スマホ禁止」を規則にして社会の情報から遠ざけようとする強豪私学もあると聞くが、それでは選手たちはどんどん考えが偏り、社会から遅れて満足な成長も見込めないだろう。

「時間があるわけではないのでワールドシリーズまで見ることはできませんが、YouTubeなどで1日のハイライト動画は観れるので、いつも楽しみにしています」

 メジャーリーグの話をすると嬉しそうな表情に変わる達がそんなことを話していた。

 時代は進んでいる。社会がそうであるように、今の高校生は情報を得ている選手ほど一歩先を行っている。

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