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来秋ドラフト目玉の“最新型ピッチャー”とは? 令和の高校生は「緩急で投げない」「球速にこだわらない」
posted2020/11/05 17:02
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
プロで多くの投手のボールを受けてきた経験を持つ指揮官には、近畿地区NO.1右腕の異次元な部分が明確に見えたようだ。
近畿大会準々決勝の市立和歌山商vs智弁和歌山のことだ。県の一次予選から3度対戦して、全てに敗れた智弁和歌山の指揮官・中谷仁監督は天敵のピッチングをこうたたえた。
「普通の高校生は速い球や曲がりの多い変化球を投げたがるものですが、小園くんは速いストレートをバンバン投げるわけではなく、変化球をうまく使っている。その変化球も、小さい変化のものばかり。ストレートに近いボールを投げて幻惑するうまさがありますよね」
センバツ出場校に選出される可能性が高いと言われる近畿大会のベスト4進出までに至る2試合。市立和歌山のエース・小園健太(2年)が失ったのは18イニングで1点。それも、内野ゴロの間に与えたものだけだ。140km台のストレートをコーナーにうまく投げ分け、2種類のツーシーム、スライダーを投げ分けていく。現代型の投手といえるだろう。
昨今はピッチトンネル(理論)の普及などもあって、メジャーリーガーはもちろん、日本の投手たちは曲がりの小さい変化球を巧みに使う。「ボールの軌道にヤマができると球種の違いが分かり易い」とは巨人の捕手・小林誠司の証言である。ストレートに近い球速帯のボールを使うことで、的を絞れなくする。好投手ほど、球種のデザインがうまい。
「メディアの使い方がうまいですよね」
小園は中谷監督の言葉を借りれば「勝てる投手の要素」を持ち合わせているピッチャーといえる。さらに、中谷監督は、小園のある部分も心憎しと苦笑する。
「メディアの使い方がうまいですよね。報道などでは最速152kmって書かれていますけど、僕は小園くんのそんな球をみたことがない。141、2kmくらいだと思います。でも、そういう報道を見れば、高校生はストレートの印象が頭から離れない。もちろん、ストレートの質はいいですよ。でも、ストレートをバンバン投げてくるかって言ったら、そういうわけではない、それをうまく利用して投げている」
たしかにメディア対応はかなりうまいというのが取材しての印象だ。
「ストレートに近い変化球は意図して投げているよね?」
彼は最近のピッチャーがどういうスタイルを持っているかを熟知している語り口なのだが、細かに話そうとはしない。「メジャーも、プロ野球も見ないので、特に目標の選手はいない」と言い切るほどだ。
しかし、彼の取材を進めていくとかなりレベルの高いところで情報に網を張っていることがわかる。例えば、中谷監督も指摘した「ストレートに近い変化球は意図して投げているよね?」と問いかけると彼の説明はこうだ。