酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
近本光司、周東佑京、増田大輝、西川遥輝…盗塁上手かは成功と失敗の“収支”を見るべき
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/09/28 11:40
2年連続セ・リーグ盗塁王が見えてきた近本光司。成功率も上がってくれば、理想的なリードオフマンとなる
周東、和田、佐野ら“無印”の選手が飛躍
ソフトバンクの周東も含め、彼らには共通項がある。それは「育成上がり」ということだ。ロッテの和田や巨人の増田は独立リーグを経て育成ドラフトでプロ入り。周東も育成ドラフト。オリックスの佐野は本ドラフトで投手として入団するも結果が出ず育成契約を結びなおして野手に転向している。
いわば“無印”から両足の力だけで這い上がったということだ。
以前にも書いたが、筆者は昨今の盗塁王争いを見ていて、少々複雑な思いを抱いている。
昨年、ヤクルトの山田哲人は2年越しで「38盗塁連続成功」というNPB記録を作った。しかし2019年9月14日に失敗するとそこから立て続けに失敗し、シーズン盗塁数は「33」で終わり、盗塁王のタイトルは36盗塁した阪神の新人、近本光司に奪われた。
しかし、近本は15もの盗塁失敗がある。盗塁成功率でいえば、山田の方がはるかに上だったのだ。
「盗塁数-盗塁死」を収支とするならば
仮に「盗塁数―盗塁死」を「盗塁収支」と名付けるとすれば、昨年、セ・リーグの盗塁収支5傑はこうなる。
1山田哲人(ヤ)30(33盗塁3盗塁死)
2大島洋平(中)23(30盗塁7盗塁死)
3近本光司(神)21(36盗塁15盗塁死)
4増田大輝(巨)13(15盗塁2盗塁死)
5野間峻祥(広)12(14盗塁2盗塁死)
山田は断トツの1位、近本は中日の大島にも抜かれて3位になる。
何度かこのコラムでも紹介しているが、セイバーメトリクスでは盗塁の評価は高くない。盗塁は成功すれば次の塁を奪ってチャンスを広げるが、失敗すればアウトカウントが1つ増えるだけでなく走者も1人失う。ダメージが非常に大きいのだ。
だからセイバーの視点からすれば「盗塁は、成功率の高い走者だけに許される」と、とらえられる。
その観点における“足によるチームへの貢献度”では、山田は近本よりも上だったということになる。