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ブレックスの“黄色いアリーナ”秘話。
目先の黒字額より大切なものとは。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTOCHIGI BREX INC.
posted2020/08/26 11:30
客席の黄色は、入場者に無料で配られたTシャツだ。試合の時には、それを着た観客でアリーナが一色になる。
CSでは稼がなくてもいい?
それだけでも十分に意義があるように見えるが、ブレックスの考える本質はそこではない。
鎌田が強調するのは、クラブとしての大義だ。
「CSにあわせて限定Tシャツを作って販売すれば、その売り上げが利益につながるという考え方はあるのでしょうけど……」
他のチームの経営者が、無料での配布を躊躇する理由もそこにある。せっかくのビジネスチャンスを逃すな、という発想は決しておかしくない。だが、鎌田はこう語る。
「経営的には、レギュラーシーズンまででいかに黒字化するのかを考えてやっていますから」
プロの経営というのは、たとえ成績がふるわなくてもきちんと黒字に持っていくことである。
つまり、仮にレギュラーシーズン上位チームだけが出場できるCSがなくとも、チームとして成り立つ経営計画を立てるということだ。
目先の黒字額より大きな目標のために。
レギュラーシーズンの成績上位チームの本拠地で開催されるCSは、チームの目標ではあっても経営面ではあくまでも“ボーナス”となる。
それならば目先の黒字額を増やすことではなく、もっと大きな目標――ブレックスがブレックスであるため――にCSという機会を使うべきだと鎌田は確信している。
「CSをホームで開催する権利は、シーズンを通してファンのみなさんと一緒に戦ってきて、やっと勝ち得たものだとも思っています。なので、ファンのみなさんにしっかりと還元して、喜んでもらいたいというところが一番です。
それにCSで一体感を得られたという感動や、アリーナで応援するのがこんなに楽しいと感じてもらう経験は、将来につながるものですから」
あの黄色いアリーナには、Tシャツの大盤振る舞いという話にとどまらないビジョンがあるのだ。