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コロナ禍でも着々と育つ期待の若手。
22歳・琴ノ若は相撲一家の3代目!

posted2020/05/28 18:00

 
コロナ禍でも着々と育つ期待の若手。22歳・琴ノ若は相撲一家の3代目!<Number Web> photograph by Kyodo News

令和2年の大相撲初場所千秋楽。上手投げで旭大星を破り勝ち越しを決めた琴ノ若。

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荒井太郎

荒井太郎Taro Arai

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Kyodo News

 幕内デビューという晴れの舞台で万雷の拍手や声援を浴びることはなかったが、史上初の親子3代幕内力士となった琴ノ若が無観客で迎えた先場所、9勝と堂々たる結果を残した。9日目に早々と7勝目を挙げながらその後は4連敗と勝ち越しに王手を懸けながら足踏みしたが14日目、“難産”の末に待望の8勝目をマークしたのだった。

「まだ明日があるので気持ちを切らさずにやらないといけない」

 うれしいはずの新入幕での勝ち越しにも表情が全く崩れなかったのは、大きな宿命を背負っているからなのか。

 祖父は先代佐渡ヶ嶽親方の元横綱琴櫻、父は師匠となる当代佐渡ヶ嶽親方で元関脇琴ノ若。相撲一家に生まれた“3代目”は祖父も父も果たせなかった新入幕勝ち越しを成し遂げた。それでも「十両(を抜け出したのは)は自分のほうが遅いので」とどこまでも控えめだった。

「誰かに負けたということだな」

 5歳のときにはすでに「力士になる」と偉大な祖父と約束をした。第53代横綱琴櫻は“猛牛”の異名を取り、持ち前の強烈なぶちかましを武器に32歳で綱を張った努力と忍耐の人だった。

「毎日、銭湯に連れて行ってくれて、帰りはいつもアイスを買ってくれた」と琴ノ若は祖父との思い出を語る。孫には優しい好々爺であったが、相撲の大会で2位や3位の好成績を収めても「誰かに負けたということだな」と勝負の厳しさは幼少のころから叩き込まれていた。一方で右四つ、左上手を引きつけて攻める相撲ぶりは体型的にも似ている父・琴ノ若を彷彿させる。

 昨年名古屋場所、新十両を機に父で師匠の四股名を継いだ2代目琴ノ若だが、大関になったら琴櫻の四股名を譲ると亡き祖父とはもう1つの約束を交わしていた。

 ところで、所属する佐渡ヶ嶽部屋は琴櫻が再入幕を果たした昭和39年九州場所以来、現在に至るまで半世紀以上に渡って幕内力士が途絶えたことがない。途中、昭和50年代前半は“綱渡り”の時期があったものの継続中の記録としては最長である。そんな大記録も今年初場所、断絶の危機に見舞われた。

【次ページ】 部屋を救った飛躍のきっかけは弟弟子の存在だった。

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