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降格危機ヴェルディを5戦で救った。
野獣エジムンド逸話と技術の凄味。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byAFLO
posted2020/04/26 08:00
わずか5試合でヴェルディの降格危機を救ったエジムンド。暴れん坊だがセレソンに招集された実力は本物だった。
当時の小見監督が振り返る凄味。
当時、監督を務めた小見幸隆は言う。
「最初に情報をくれたのは、ブラジル人フィジカルコーチのイナハでした。エジムンドがクルゼイロをクビになった。フリーの今なら安く獲れるぞ、とね」
エジムンドのプレーの凄味はどこにあったのか。
「南米の特別なタレントに総じて言えますが、彼らはどんなプレーも可能にする技術を持っているんです。ただし、それをゲームで見せびらかさない。ドリブルで3人連続で股抜きしてみろと言えば、やれますよ。メッシやマラドーナだって、もっと派手なプレーをやろうと思えばできる。でも、試合では余計なことはせず、必要に応じて最適なプレーを選び取ります。シンプルなプレーの重要性を本能的に知っているのが最大の凄味。同時に、高度な技術の引き出しをちゃんと持っているから、なんだこの程度かと向かっていった相手は簡単にかわされてしまう」
相手がイラつくボールの持ち方。
巧妙にボールを守り、相手をいなしながら前進するドリブル。小見の見方はこうだ。
「守る側からすると、非常にイラつくボールの持ち方をしますね。どんな体勢でもボールとの間に脚が1本入り、むきになって奪いにいけばひょいとスルーパスを出される。大抵、巧い選手はマークする選手とカバーに入る選手のふたりを同時に見られるものですが、エジムンドは3人目の動きも見えていた。しかも、顔が下がっていても関係ない。ゴール前で決定的なシュートを打てる、ラストパスを出せるといった決め手の部分では、日本人とは次元の異なる超一流のプレーヤーでした」
ファン、サポーターに対して、メディア対応でもエジムンドは至って紳士だった。我がままぶりは影を潜めたかに見えたが、問題行動がなかったわけではない。
東京Vでの2年目、エジムンドはプレシーズンのキャンプに参加せず、開幕3試合を欠場する。クラブは故障が理由としていたが、真相は違ったようだ。
「足首のここが痛いんだと自分に見せてはいたんですが、リオのカーニバルのVIP席ではしゃいでいるのがわかってね。こいつめ、と思ったものです」(小見)