イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローが築く、新たなる指導者像。
開幕戦始球式で最速記録なるか?
text by

笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2020/02/26 11:50

打撃投手を務めるマリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー。
現役時代の愛用バットでノック。
イチローさんは打撃投手登板前に外野の守備練習でノックも行った。コーチ陣は誰もが軽量で細身のノック専用のバットを使用するが、彼は現役時代から愛用している約900グラムのバットをそのまま使っている。25年以上も使い込んできた相棒への信頼は今も変わらない。
「この方が操作しやすいからね」
また、キャッチボール、遠投、ランニングも毎日行っている。室内の打撃練習も同様でスイングするたびに「ウッ!」と聞こえてくる声も現役時代と変わらず、全力での振り込みが続いている。何故、現役時代同様の練習を続けるのか。その理由は明快だった。
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「(若手からアドバイスを)求められた時に見せてあげたいからね。それが出来れば説得力がより増すじゃないですか」
新たなる指導者像の構築。イチローさんらしい発想だと感じた。
「面白そうだねぇ。どうせならねぇ?」
先日、マリナーズは3月26日(日本時間27日)に本拠地で行われるレンジャーズとの開幕戦でイチローさんが始球式を行うことを発表した。そして、球団幹部はスピードガンで計測し、場内表示する可能性を示唆した。そのことを振ると笑顔を見せた。
「どれだけ準備できるか、ですね」
マーリンズ時代の2015年10月4日(日本時間5日)、フィリーズ戦でメジャー初登板を果たした際、当時41歳のイチローは最速89マイル(約143キロ)を計測した。ただこの時はブルペンで準備することなく、ベンチから直接マウンドに上がった、言わば“ぶっつけ”登板でもあった。試合後の悔しそうな表情は今も覚えている。
「最低90(マイル・約145キロ)って思っていました。いやぁ、ショックですね」
果たして、開幕戦での始球式はどうなるのか。
「面白そうだねぇ。どうせならねぇ?」
始球式史上、最速記録樹立へ色気は満々。野球人としての本能は全く衰えていない。
