才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
挫折の多かったサッカー人生から
戸田和幸が学んできたもの。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byYuki Suenaga
posted2019/12/11 11:30
参考にしたモンテーロというDF。
だから自分と同じような体格なのにトップレベルで活躍している選手を探して、研究していましたね。なかでも参考にしていたのは、当時ユベントスにいたウルグアイ人のパオロ・モンテーロというディフェンダー。176cmで75kg、全然足も速くないのに、世界のトップクラブでセンターバックを任されていたんです。彼のプレーを見続けて、ポジショニング、そこからの予測、アクションを起こしたときのギリギリのプレー……インテリジェンスを駆使して、自分が持っているものを最大限に使いながら、最終的には限界まで出し尽くす。それができなきゃクラブで生き残っていけないと分かりました。
スーパーエリートなら自分の一番得意なポジションに好きなプレースタイルで進めると思うんです。でも僕にとっては、自分が好きなことをするのではなくて、勝つためにするべきことをするというのがサッカーなんです。
エリートではないからこそ考えたこと。
現役時代の目標は、できるだけ高い位置に到達して、長くそこにい続けるということでした。どこのポジションか、どんなプレースタイルかは自分では決められることじゃない。それよりも大切なことは、集団の中で自分の立ち位置を把握して、試合に出たり、次のステップに進むために何をしたらいいのかということを考える。これはエリートではなかった僕が小さな頃から考えていたことでもあります。
指導する学生たちにも言うのですが、そういう取り組む姿勢というのはサッカーだけじゃなく、社会に出た時にも必要だと思うんですよね。枠組みを意識して、その中にちゃんと自分ができるものを詰めていかないと組織に貢献できない。まずはチームとしての部分が必要で、その下にグループとしての部分が必要になって、最終的に個人が判断と決断をしていく。そういう枠組みを理解することは大切だと思っています。
ただ、信念だけはしっかりと持たないといけないと思います。僕はプレーをする上で、物事をクリアにしたい。正解がない中で、お互いが作り上げられるマックスはどこかを探りたいんです。20代の頃はそんな自分の思いが先行してしまって、相手に嫌がられたことも多かったですね(笑)。
全部直球でぶつかっていたので、チャンスを逃したり、色々な失敗もしました。投げるタイミングを変えたり、投げ方を変えることも必要なんだと気づいたのは30歳を越えてからですね。でも、そういう経験を若いうちにやっておいて良かったなとも思うんです。だって今からやったら、もう次はないですからね(笑)。もうちょっとうまくできていればよかったと思うことはたくさんありますけど、アクションを起こして、エラーをして、自分なりにフィードバックして、次につなげていくと言う意味ではよかったんじゃないかな。